ゲーム始めたら猫耳で銀髪の記憶喪失少女NPCが捨てられていたので育成して最強目指します
室星奏
第1話 美少女NPCと前日譚
『FI?』
『そうそう! Fellow Islandsッ、通称FI! このゲームむっちゃ面白いんだよ』
〇
「…って言って持たされたけど、VRMMOなんて俺あんま知らないしなぁ」
俺、篠崎ハルは机に置かれた物を見て、ため息を吐く。VRMMOというジャンルのゲームを起動するためのヘッドゴーグル、そして『Fellow Islands』と表紙にかかれたゲームのソフト。これらすべて幼馴染である椎名大樹に渡された物だ。
「というかよくこんな物用意できたな」
アイツが言うには『兄が持ってた奴なんだけどもう使わないから』と言って売却予定になっていた所を、勝手に持ち出して俺に渡したという。
ドヤされるぞ? と言ってもあいつは『その時はその時』といって聞かなかった。
そしてこのFellow Islands、通称FI。ここ最近人気のVRMMOであり、機能やシステムも非常に素晴らしく、イベントも盛んにおこなわれているという。
「アイツ…ゲーム内で他に遊べる仲間がいないから俺に頼んだんじゃないのか? といっても、あの押しには反論できやしない」
ため息の回数もだんだんと多くなる。今行っている高校もアイツが一緒に行こうと言って聞かなかったから行ったのであって、自分で決めたわけではない。それほどアイツの押し強さには毎回負けているのだ。
まぁそれでも、一緒に居て悪い気分にはならないし、寧ろ楽しい事も多いから良いのだが。
「しょうがねっ、とりあえず起動してみますか」
ヘッドゴーグルを装着し、耳の所についていた電源をオンにする。
ヒュイイン、と典型的な機械音が流れると同時に意識がだんだん遠のいていく。
これがゲームの世界に入るという感覚なのだろうか?
この時俺は、不安な気持ちのどこかに、微かな好奇心も生まれていた。
〇
意識が戻ると、目の前には何もない白い空間が広がっていた。
ここが初期設定の場所なのだろうか?
「無機質だな…もうちょっと面白く感じそうな内装でも良くないか?」
一人で意味のない愚痴を吐いていると、目の前に文字が浮かび上がる、『これよりキャラクター設定を開始します』と。
内装は適当だが、説明等は案外しっかりしているようだった。
『最初に、名前を設定してください』
「名前…VRMMOっつーことは、本名は色々マズいよな…。篠崎のシノに、ハルのハをくっつけて、シノハでいいか」
我ながらクソみたいなネーミングセンスだが、今更突っ込む必要もない、こういうのは感覚でいいんだ感覚で。
文字パネルに『シノハ』と入力して完了を押す。すると今度は周囲に様々なオブジェが形成される。
『ジョブを決定してください』
「ジョブ、つまり職業か。こういう系のゲームのだいご味だよな」
剣を主に扱い戦場の戦略にも長けた戦士。回復や支援のエキスパートの白魔術師、攻撃魔術や遠距離攻撃に長けた黒魔術師、そして圧倒的速さで相手をかく乱する上級者向けの暗殺者、その他にも色々存在している。
「…やっぱりこういうのって派手に遊びたいよな。だからとりあえず適当に戦士でいいや」
戦略にも長けたという事は、何か戦況を変えるようなスキルとかも存在しているだろうというちょっと淡い期待も込めながら戦士を選ぶ。
まぁ大体の理由が派手に戦いたい、という物であったが。
『初期ステータスを振り分けてください』
「ほう。俺みたいな少し優等生で派手好きといったら、賢さと攻撃力をバランスよく振って、あとは素早さとかかな~?」
ちょっとイキってみた、我ながら恥ずかしい。でもこれは悪い選択ではないだろう、後に分かったことだが、攻略サイトにもそう書いてあった。様様である。
『キャラクター設定が完了しました、容姿は現実のものが反映されます。それでは、Fellow Islandsの世界にいってらっしゃいませ』
あぁそうなのか、別にイケメンになれたりはしないのか。容姿いじって少しイケメンになったら、可愛い美少女キャラクターを相棒にできるかもしれないと思ったが、現実もゲームも甘くないという事だろう。
足元に穴が現れ、俺は静かに落下する。
光に包まれる――そして数秒後、静かに着地し周囲の光が晴れていく。
そして晴れた先に広がるのは、のどかな街風景であった。
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