第10話 美少女NPCと新たな街へ
家に帰宅したハルは急いでベッドに駆け付け、ヘッドゴーグルを起動する。
起動が終わると、視線は前回ログアウトした宿屋の天井を映し出す。
「あぁ、寝ながらログアウトしてたのか。っと、そんな事より、ユキは!?」
俺はベッドから飛び起き、ユキが寝た筈のベッドを見る。俺はすぐに安堵した。
そこにはすうすうと寝息を立てたユキが可愛らしい寝顔を浮かべていた。
「良かった。居なくなっていたらどうなっていたか、と……ん?」
寝顔に気を取られて気づかない所だったが、明らかに違う点に俺は気づく。
ユキの名前の横にあるレベル数値……それが5から11に上がっていた。俺がいない間に何があった? いない間は使い魔と同じく消えているのではないのか?
一人で勝手に外に出た? でもなんでそんな事……とりあえず、契約者としてそれは聞かねばなるまい。
「おい、起きろ」
「ん、ぅ? ……っ! シノハ!」
ユキは先ほどの俺と同様にガバッと起き上がる。
「どこいってたの!?」「今までなにしてた!?」
俺達は同時に質問をぶつけた。ユキはハッとした顔をして『ごめん』という。
別に謝る必要はないんだが、とりあえず俺の質問から先に聞く事になった。
「今までなにしてた? レベル、めっちゃ上がってないか」
「シノハがいきなりいなくなって、探しに行ってた……そこでモンスターに襲われて、えっとその、色々あって……」
凄い言いにくそうにユキは語る。いなくなって探しに行ったという事は、ログアウト中は消えていないという事なのか?
NPCといえばそれまでだろうが、普通のゲームはゲームをやっていない間のNPCの挙動なんて確認できる筈がない。
これがVRMMOだからか? オンラインゲームならば、俺がいなくてもNPCは誰かが確認できる。それ故に消えなかったと言えば説明はつくが。
「そうか。悪いな、心配かけて。でも安心しろ。俺はお前を置いていくなんて真似はしない。だから、これからも俺がいきなり消える事はあるだろうが、その時は戻るまでその場で待っててほしい」
「何でいきなり消えるの?」
「そ、それは内緒だ。別に深い理由はない、信じてくれ」
「……わかりました」
納得できないようなジト目をされたが、何とか理解してくれたようだった。
でも、それだけユキは俺の事を心配してくれていた。なぜだか、俺は嬉しい気持ちを覚えた。
「良し、理解してくれたところで、さっそく次の街に行ってみるか。道中の敵も倒すぞ、ユキが11になった分、追いつかにゃならんからな」
「はいっ!」
俺達は次なる場所に期待を募らせながら、村の宿屋を後にした。
〇
『グガーー!!』
森の先へ進むと見た事のないモンスターもちらほら見え始めた。まずはこのゴブリン、RPGでおなじみのアイツだ。
こいつは群れで行動する事が多く、遭遇すると大体2、3体くらいで襲いかかってくる。
つまりは1体づつ倒すよりも効率よく経験値を稼ぐことができる、レベル上げの恰好の的というわけだ。
「【
『ゴブリンは37のダメージを受けた!』
『ゴブリンは倒れた!』
「おらっ!」
『ゴブリンは18のダメージを受けた!』
『グ、ギギ……』
【
もういつの間にか、ユキは魔法について慣れ親しんでいた。その様はもはやNPCではなく普通のプレイヤーであるかのように。
対する俺は、未だにただの通常攻撃しかできず、ゴブリンを一撃で仕留める事はできなかった。悲惨である。
『グギ!』
【振りかざし】という文字がゴブリンの上に表示される。初めて見る俺でもただの通常攻撃ではない事は想像つく。
ユキはその文字を見るなり、離れてと叫ぶ。が、時すでに遅しであった。
ゴブリンはそのボロボロで粗悪な石剣を大きく振り上げ、そのまま近くの俺に向かって斬りつける。
『シノハは29のダメージを受けた!』
「いってぇ!?!!」
「シノハ!?」
「大丈夫だ、んにゃろ!」
斬りつけられた腹部に痛みが走るも、そのまま踏み込みゴブリンを一閃する。
『グガッ…』
『ゴブリンは17のダメージを受けた!』
『ゴブリンは倒れた!』
『シノハのレベルが6に上がりました!』
スキル【
ボフン、と弾け気えたゴブリンを見届けた俺は、さっそく修得したスキルを確認する。
まあ、その名前から大体想像はつくのだが。
スキル【
修得条件:戦士レベル6
使用MP:3
クールタイム:20秒
効果:敵1体に身体ごとぶつけ攻撃する(通常×1.5)
対象にスタン状態を付与(確率:5%)
スタン……気絶という意味だろうか? 確率は低くあまり期待できそうにはないが。
それでも、通常攻撃しかなかった俺にとっては唯一の攻撃スキルである為、当たりと言えば当たりだろう。
「少しはまともに戦えるようになったか」
「剣とか使うスキルは覚えないんでしょうか」
「知識がないからな。とりあえず街に入ってから考えよう」
俺達は目の前にある大きな入口に目を向ける、この先に俺達の知らない街風景が待っているのだ。
互いに顔を合わせ、頷く。
「いくぞ?」
「はいっ」
「「せーっの!」」
俺達は手をつなぎ、新たな街へ友達とよくやるジャンピング入場で足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます