第9話 美少女NPCと大虎【❄】
「お前…あのNPCか? いや、んなこたどうでもいい、なんでこんな所にいやがるっ!」
「え、えっと」
『グルルルルルルル……』
「って、今その話してる場合じゃねぇな」
クロウタイガーの怒りは誰から見ても頂点に達していた。喉を鳴らし、こちらをじっと睨みつけ、今にもとびかかってきそうな雰囲気を放っている。
「とりあえずお前は走って戻れ。死んでも拠点に戻るくれぇだ。俺がやる」
「ぶ、部が悪いよ!」
「知るかっ、金は全部預けてある。死んでも問題ない」
「問題ないの!?」
理由を説明してくれ、と言わんばかりのツッコミを放ったが、彼はそんな物気にせず、クロウタイガーの方へ突っ走る。
「おらおら! フレイ様のお通りってな!」
『グァァアァァァアアァァ!』
「【
彼の持つ紅き剣に激しい炎が宿る。
その炎はクロウタイガーの身体を焼き尽くし、猛烈な痛みを発生させる。
そして炎に包まれた剣の刀身にダメージが入る。
『クロウタイガーは28ダメージを受けた!』
『クロウタイガーはやけど状態になった!』
『クロウタイガーは77のダメージを受けた!』
『グルルルァァアアァァァアアアァァァ!』
「っち、これでも死なねぇか」
ダメージは通っているが、いかんせんHPが高いのか中々倒れそうにない。攻撃を放ったフレイという男はすぐに後退し、クロウタイガーの爪攻撃の範囲外へと行く。
『グアァ!』
クロウタイガーの巨体の上に【
「っち、遠距離攻撃持ちとかありか!?」
爪を大きく振りかぶり、何もない地面に叩きつける。
ズガガガガガッと大きな音をたて白い爪の衝撃がフレイに向かって走る。
「いちかばちか【
剣を身体ごと回転しながらその衝撃波を薙ぎ払って受けるという荒業。
剣と衝撃波の間に微かな火花が出ている、NPCである彼女でさえも『どういう原理してるの?』と心の中で突っ込んだ。
ガツン。
だが、さすがはレベル40の衝撃波といった所だろうか? 剣が逆に押し返され、そのままフレイの身体は後方に吹き飛ばされた。
『フレイは82のダメージを受けた!』
「ってぇなぁクソ!」
「82……大きい」
クロウタイガーはそれでも進撃をやめない。タイガーの名に恥じぬ速度でフレイの元まで行き【
反応したフレイは剣を身体の前に突き出し、その攻撃をガードする。
『フレイは36のダメージを受けた!』
『フレイは31のダメージを受けた!』
「くそ、こりゃぁ持たね!」
懐の回復ポーションをガードしながら使うが、それでも一撃一撃が重く、剣で耐えるのも一苦労だ。
先ほど弾き返した時は大した力ではなかったが、今はその比にすらならない、つまりガチで殺しに来ているのだ。
(どうにかして気をそらさないと…)
『フレイは33のダメージを受けた!』
『フレイは32のダメージを受けた!』
「くっそ、いつ終わんだこれ!」
もう見てられない。私はすくっと立ち上がる。
魔力増強のクールタイムが終わっているのを確認した瞬間、ユキは即座に使用し
「【
「【
『クロウタイガーは54のダメージを受けた!』
『グルァアアァァァ!』
「なっ」
ユキが放つ強力な
クロウタイガーの視線がこちらに向く、今度はこちらにターゲットが向いたようだ。
(
『グルルルルァァアアァァァ!』
「っ」
「だぁもう! お前は
『グアァァアァァ!』
クロウタイガーの矛先がいきなりフレイの方に向けられる。
困惑こそしたが、言われた通りに
「【
『クロウタイガーは56のダメージを受けた!』
「【
『クロウタイガーは102のダメージを受けた!』
『グァアァァ……ガァアァ!』
威嚇の声もだんだん小さくなっている。あれだけすくんでいた足も収まり、堂々としていられるようになった。
声が小さくなったからだろうか? それともフレイさんがいるからだろうか? でもそんな事はいまどうだっていい。
今は
「やっちまえ!」
「んっ~~~! 【
『《クリティカル!》クロウタイガーは88のダメージを受けた!』
『グアァ……ァ……』
「ク、クリティカルだ!?」
「やった?」
『クロウタイガーは倒れた!』
特大級の火玉を受けたクロウタイガーの身体は横方面にズドンッと崩れ落ちる。そのまま光となってパリンと消えた。
『フレイのレベルが34にあがりました!』
スキル【
『ユキのレベルが6から11にあがりました!』
スキル【
魔法【
魔法【
レベル40の強敵だったからか、私のレベルがいきなり10を突破した。新たな魔法とスキルも覚えたようで、戦う前とは段違いに違う感覚がする。
一先ず、シノハがやっていたようにスキルを確認してみる。
スキル【
修得条件:???レベル10
クールタイム:無し
効果:常時発動。
魔法以外の近接系武器及びスキルでダメージを与えた場合、与えたダメージの半分の数値分MPを回復する。
(MP回復……つまり、回復の道具とかそういうのはいらないんだ……)
新たに魔法も覚えた。今までは
(これで少しはシノハの役に立つかな……)
シノハを探しに来ただけなのに、なぜかガッツポーズまでして喜んでしまった。
「HP増える常時スキルか。これは良い。そんな事よりお前だ」
「え? わ、私ですか?」
「ったりめぇだろ。お前なんでここにいんだ? 相方とかいる筈だろ?」
「宿屋に泊ってたんですけど……何か、起きたらいなくなってて……」
怖い感じで聞いてくるものだから、こちらも思わず身構えてしまう。
さっきのクロウタイガーより、この人の方が怖い……。
「いなくなってた?……ログアウトしてたらいなくなると思うが……いや、NPCだからそうはならねぇのか?」
「あ、あの? ログアウトって……?」
「気にすんな。とりあえず、もうちょっとだけ宿屋で待ってろ。どうせ今日中には戻ってくるだろ、来なかったら相当な馬鹿とでも思っとけ」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ、そうだ。しゃーねぇ、村の宿屋だろ? 一応送ってくぜ」
私は感謝の意を述べ、冒険者さんと一緒に村の宿に戻った。
その道中、私はシノハさんについて喋ったのだが、この人はふぅ~んと言って相槌を打つだけでした。
それでも最後は『面白い奴だな』といって笑ってました、根は良い人で助かりました。
掲示板
54 名無しの冒険者
うっす。NPCの子見つけたぞ、相方はいなかったが。
55 名無しの天才
まじで??
56 名無しの魔術師
情報提供くれ
57 名無しの冒険者
なんか初期村付近の森奥にある危険地帯でクロウタイガーに襲われてた。
一応たすけたけど。
58 名無しのごんべえ
救世主じゃんw 好きになったんじゃね?w
59 名無しの戦闘狂
>>58
もしそうなら冒険者さんを恨む。
60 名無しの冒険者
>>59
なんでだよ。まぁそういう雰囲気はねぇから安心しろ。
詳細はこんな感じ。
・レベルはクロウタイガーとの戦闘で11まで上がった。
・なんか初期魔法の
・【魔力増強】なるスキルを使ってた。後レベルアップ時に【魔力吸収】っていうのを修得したのを見た、効果は知らない。
・装備は短剣と白いローブ。
・危険地帯には相方を探しにいってた。多分ログアウトの事を知らない。←これに関してはたぶんNPCだからかと。
魔法でクリティカルなんか初めて見たぞ。
61 名無しの魔術師
何それ、火玉で50!? レベル20くらいなら分からなくないけど。
62 名無しのレス隊長
今来た、バケモンじゃねぇか。
63 名無しの盗賊
今後のイベントに関連するNPCとか?
うーん情報薄い。
64 名無しのごんべえ
もっと観察する必要があるな、俺も明日探しに行くわ。
今日は素材回収でな、周回きつすぎワロタ
65 名無しの冒険者
とりあえず、容姿と居場所はこれでわかったから、明日から随時また見てくる。
情報を得たら教えるわ。まじで有名キャラクターになるかもしれん。
66 名無しの戦闘狂
今のうちに古参アピールしとこw
67 名無しのレス隊長
じゃぁ今日は観察していくという事で終わりね。
おっつー
68 名無しの魔術師
おつかれー
69 名無しのごんべえ
乙
70 名無しの冒険者
お疲れ、俺は寝る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます