第2話 美少女NPCと出会い

「へぇ、案外作りこまれているんだな」


 のどかな街風景、目の前には大きな噴水、周囲には様々な顔の村人NPCに、始めたばかりのプレイヤーがちらほら見受けられる。


「一先ず…色々確認するか」


 視界の端にある三本バーのアイコンを注視すると、メニュー画面が開かれる。道具、装備、ステータス…ゲームをプレイするうえで欠かせない物がたくさん見受けられる。


シノハ《戦士》 LV:1 所持金:金貨(0) 銀貨(5) 銅貨(10)

【HP】45/45 【MP】5/5


【攻撃力】20《初期:10 振り分け:10》

【魔力】5《初期:5 振り分け:0》

【防御力】25《初期:20 振り分け:5》

【敏捷】10《初期:5 振り分け:5》

【知力】15《初期:5 振り分け:10》


装備

武器・右:初級の鉄剣

防具(武器)・左:初級の盾

頭:

身体・上:革衣・上

身体・下:革衣・下

足:

アクセサリー:


「ふむ…バランス良く振ったはいいが、少し物足りない気もするな。いや、今考えても仕方ないかな~」


 ふぅ、と息をつきメニューを閉じる。改めて周囲を見渡してみる。

 NPCは皆自律して動き、仕事したり散歩したりして暮らしている。

 眼を閉じてみれば風が当たるような感覚を覚える。まじで、現実世界にいるような感覚だ。


「すげぇ…さて、とりあえずどこに行くか…ん?」


 一先ず近くの森まであるこうとした時、ふと俺は気づく。目の前の噴水から少し下に視界を送ると、そこには小さな箱に入ったNPCの女の子が一人。


「…え、誰?」

「…?」


 背中の真ん中まで延ばした銀色の髪に、ぴょこっと生えた猫耳の可愛らしい美少女NPCがこちらを覗き込んでいた。

 だが一つだけ違うのは、名前の表記がないという事。


「えっと、君、自分が誰か分かる?」


 少女は小さく首を振る。


「…記憶喪失系NPC? 何それ、聞いたことないんだけど」

「お兄さんは?」

「ん? 俺はしのざ…いや、シノハだ」

「シノハ…良い名前」


 俺のクソダサネーミングセンスを良いと評する当たり、こいつは他のNPCとは違うとすぐ察しがついた。


「…で、何してるんだここで?」

「分からないの、私が何でここにいるのかも、誰なのかも、全部」

「…めんどくせぇ…。でも、このままだと色々マズいしな。一先ずこっから離れた所で話そうか」

「…? うん」


 少女のNPCを立ち上がらせ、村の外れへ行く。一部のNPCは俺に怪奇な視線を送る。やめろやめろ、俺は不審者じゃねぇ。



 〇



村の外れまで来て、少女を眺める。


「…」

「来たはいいが、どうすっかな…。お前、NPCだけど何かステータスとかある? えーっと、身分証明、的な?」

「うん」


 彼女が手をスマホのように動かすと、目の前に俺の時のようなステータス画面が表示される。



???《NPC:???》 LV:1

【HP】25/25 【MP】40/40


【攻撃力】10

【魔力】30

【防御力】5

【敏捷】5

【知力】10


装備

武器・右:

防具(武器)・左:

頭:

身体・上:古びた村娘用ドレス

身体・下:(古びた村娘用ドレス)

足:

アクセサリー:



「魔力たけぇ!?」


 レベル1なのは酷いとしか言いようがないが、初期魔力が異様に高い。後最も目につくのは、職業までが不明であるという所。凄い好奇心がそそられる。

 レベルがあるという事はつまり、育成が可能だという事。ならば、こいつを育成してやれば、何か凄い事が起きるのではないだろうか? 確証はないが。


「…こいつは、当たりを引いたかもな。どーせ他の奴らはボロボロだからっつって、見向きもしなかったんだろうが」

「? お兄さん?」

「なぁお前、俺と一緒に来ねぇか?」

「え?」


 これが俺、シノハと猫耳で銀髪な美少女NPCの出会いであった。

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