第3話 美少女NPCと契約者
「一緒に…」
「どうせこのままいても、行くアテとかないだろ? これから俺は初めての冒険に出るわけだが、一人だと何かとつまらないしな…。どうだ?」
「一緒に…冒険…」
名も無き少女は、一瞬悩むような表情をする。俺の言っている事には一理あるが、一緒についていっていいのだろうか? みたいな感じの顔だ。
NPCにも不審者とかの知識が搭載されていたりするのだろうか? 俺はそういう類でもなんでもないのだが。
「私で、いいの?」
「自分で言うのもなんだが、俺と一緒に居てくれる奴なんかたかが知れてるぜ? どうせなら、初めて会ってこうして話をすることができたお前と共に行動したい」
「…」
少女は胸に両手をあて、目を閉じる。
「不安か?」
「いえ…ただ、見ず知らずの私にここまでしていただける人に出会うのが初めてで…弱いし、ボロボロだし…?」
「何だ、そういうことか。気にするな、最初のうちは皆そういうもんだろう。俺の姿を見てみろ、ボロボロの革にすぐ折れそうな剣だぜ? お前と何も変わらんと思うけどな」
「に、にあってると思いますけど」
「おう、お世辞をありがとう」
少しずつ少女も笑顔を見せるようになってきた。NPCだから最初は話が通じないと思ったが、案外人と喋るのとそんな大差はなかった。
「それに、弱いなら強くなればいい」
「え?」
「レベルがあるってことは、成長するという事だ。成長すれば幾らでも強くなれる。…そうだ、どうせならこの世界で最強の二人になってやろうぜ」
「最強の…二人」
「良い響きだろ?」
「…確かに。なんだかかっこいいですね」
「だろ? で、どうだ…。一緒に来るか?」
「…私でいいのなら、ぜひっ」
少女は笑いながら俺にそう答えた。これはいつか絶対に優秀な戦力…いや、相棒となり得るだろう、理由はわからないが俺はそう確信していた。
魔力が高く職業も不定の美少女NPC、これ以上の面白そうなあたりが他にいるだろうか? ラノベでよく当たる最強種とかそういう類なんじゃないか、猫耳だし。
そういう様々な妄想が入り乱れた。
「おう、勿論だ」
俺がそういうと、視界にあるメニューが更新される。開いてみると、俺のステータスの横にNPCのステータスが表示される、上の方には『契約者』という表示がつく。
(契約者…RPGによくある使役している魔物とかそういう何かだろうか、というかこういうシステム自体は存在していたんだな)
「…そういや、お前呼びというのもなんかアレだよな。かといって記憶喪失で名前もわからないとなると…」
「…ごめんなさい」
「いや、良い。思い出すまで、俺が思いついた名前を使え、う~んそうだな」
俺のクソみたいなネーミングセンスも、さっきこいつは良いと言ってくれた。なら暫くは考えた奴を使っとけば良いだろう。
「銀色で白い髪色だからな…良し、ユキなんてのはどうだ?」
「ユキ…?」
「白いあの雪からつけた名だ。白い銀髪を見ていると、それが真っ先に連想されてな…どうだ?」
「ユキ…気に入りました。私はこれから、ユキです」
「おう、よろしくな、ユキ。じゃぁ早速冒険に…と言いたい所だが、装備がこれじゃ色々不味いよな」
この革装備はさすが支給品と言わんばかりの悲しい性能をしている。何か特殊な効果もなければ、増える防御力も無い。いわば仮装備といったところだろうか、裸だとまずいしな。
この初期配布のお金も装備購入用のお金だろうとすぐ察しがついた。
「私に至っては、武器とかもないですし…」
「あぁ、そうだな。あと、もうそんな緊張しなくていいぞ。俺達はもう相棒同士だからな」
「え? えっと、でも…」
「心配いらねぇって」
「…は、はい。了解ですっ」
「…ま、最初はそれでいいか。よし、それじゃぁ早速装備でも買いにいくか」
「はいっ!」
俺とユキの最強を目指した冒険譚は、こうして始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます