第5話 美少女NPCと魔法

 先ほどの戦闘でレベルが2に上がったという表示を思い出し、二人でステータス画面を確認する。

 戦士である俺は攻撃力と耐久力が3点ずつ、知力と敏捷が2点ずつ上昇していた。やはり、魔力のステータスは上がりにくいようだ。

 ユキはその逆で、魔力が5点上昇しており、それ以外にも敏捷と知力が2点ずつ上昇していた。


「成長したなっ、レベル2まで上げるのはすぐだったな」

「これが…成長?」

「あぁ、最強への一歩だな。ところでユキ…【火玉ファイアーボール】が使えるようになったって出てなかったか?」

「【火玉ファイアーボール】…ですか?」


 ユキのステータス画面を改めて確認する。そこの魔法項目を見てみると、新たに【火玉ファイアーボール】という文字が追記されている。

 尻尾揺らしながら興味津々にそれを眺めるユキを見た俺は、一つ提案をする。


「…せっかくだし、試してみるか?」

「試す?」

「【火玉ファイアーボール】をだよ。こういうゲームでのだいご味だ、使えるようになったら使ってみたいよな」

「は…はい!」


 一先ず俺達は森の中心部にあるひらけた場所へと移動する。そこにはスライムも沢山おり、練習には絶好の場所となっていた。



『ピキー!』

「よし、こっちに気づいたぞ。ユキ、やれるか!?」

「は、はい…え、え~っと…、こ、こうかな! 【火玉ファイアーボール】!」


 腕をわたわたと動かして焦っていたが、最後には眼前のスライムに向けて手を前に突き出し火玉を放つ。

 ゴウゴウと燃えるその火玉はスライムの顔面に直撃し、当然の如くスライムは断末魔をあげてはじけ飛んだ。


『スライムは15のダメージを受けた! スライムは倒れた』


「すげぇ、ダメージ量が格段に違う」

「…だ、出せました!」


 ユキは『やり切った』と言わんばかりに汗を流しながら笑顔でこっちを向いた。消費するMPの値はたぶん少ないだろうが、ユキにとっては初めての事で全身全霊の力に近かったんだろうな、かなり疲れた表情をしている。


「良くやったなっ! …といっても、一回でそんなにヘバっていたら連射はきついな。NPCにも疲れとかの概念があるとは思わなかったよ」

「よ、夜の時は皆寝て、昼の時は働いて汗を流すっていうのは、よくある普通の事だと思いますけどっ」


 成程、考えてみれば確かにRPGとかで夜になると町から人が消えていたもんな。プログラムで作られたとはいえ、そういうのもしっかり作られているあたり、VRMMOっていうもんはすげぇなと改めて思った。

 だが1回でヘバってしまっては、あまりにも不便だろう。


「魔法使えないから良くわかんねぇけど、最初の方出し方が分からず焦ってる所もあったな。そこが無駄な動きなのかもしれない」

「ご、ごめんなさい、いきなりだったもので」

「最初はそうだろ。だからここは特訓だな。ここにいるモンスターを火玉で倒してコツをつかむか!」

「はい!」



 〇



『きゅきゅいっ!』

「来たぞ!」

「【火玉ファイアーボール】!」

『噛みつきうさぎに15のダメージ! 噛みつきうさぎは倒れた』


『シノハのレベルが5に上がりました』

スキル【護衛】を修得しました。


『ユキのレベルが5に上がりました』

スキル【魔力増強】を修得しました。


 この森にいるモンスターというのは弱い物が多かった。スライムや噛みつきウサギ等は殆どユキの火玉で一撃だった。

 ユキの飲み込みも異常なほど早く、5回放つ訓練をしただけで、疲れはほぼ無くなっていた。


「だいぶ様になったな」

「はいっ、もうだいぶ慣れて、今なら百発でも…」

「あぁ、無理はするなよ? とりあえず、スキル確認するか」


 ステータス画面を表示し、スキルの項目にある【護衛】と【魔力増強】をタップする。



スキル【護衛】

取得条件:戦士レベル5

クールタイム:無し

効果:一定範囲内にいる味方のダメージを肩代わりすることができる。

ただし、使用中自分は動く事ができない。



スキル【魔力増強】

取得条件:???レベル5

クールタイム:180秒

効果:使用後、180秒間有効。

有効中、魔法によるダメージを2倍にすることができる。



「へぇ…戦士の味方支援系スキルか。今の所使い道はなさそうだが。それよりも、魔力増強の方だろ。2倍ってなんだ2倍って」

「さっき15ダメージでしたから、えっと、えっと…」

「30だな。すげぇ」


 修得条件も???のレベルが5になるって所を見るに、相当レアなスキルなんだろう。おそらくこのゲーム内でも修得してるのユキだけなんじゃないだろうか。

 これは今後も確実にお世話になるな、良い訓練報酬になった。


「…良し、レベル上げと特訓もこの辺でいいだろ。とりあえず、一度村に戻るぞ」

「了解です!」


 ユキのどこか嬉しそうな声を聞いて、どこか俺も嬉しい気持ちになった。

 このまま互いを信頼しあえる良きパートナーになれると良いのだけどね。

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