第7話 美少女NPCと噂話

「…ユキ、大丈夫かな」


 翌日、学校へ向かう途中もずっとユキの事を考えていた。ログアウト中はどういう扱いになるのか、調べても特に書かれていなかった。未だ契約者について知っている人がいないのかもしれない。もしそうなら俺が先駆者という事になる、これには謎の愉悦感を覚えさせる。


『私はシノハさんについていきますよ』


 ユキのあの言葉がずっと忘れられない、それはまるで初恋の女性の一声であるかのように、ずっと脳裏からくっついて離れないのだ。これが親バカって奴なのだろうか? そもそも親ですらないのだが。

 あくまでも頼もしい相棒に過ぎない、そう心に何度も誓ってはいるのだが。


「まっ、別にいっか」

「おっ? どうしたどうした? 良い事でもあった?」

「別に。…あぁ、後さ、昨日押し付けてきたあのゲーム、割と面白かったぜ、感謝な」

「マジで!? あれやってくれたの? いやぁ~嬉しいねぇ、一緒にやる相手がいなかったからさ」

「どうせそんな事だろうとは思ったが」


 大樹が俺を何かしらに誘うさいは大体こんな理由である、特にVRMMOみたいなオンラインゲームは猶更そうだ。まぁいつもは俺が真っ先に飽きてしまって続ける事すらないのだが。


「あぁ、そうだそうだ、お前こいつ知ってるか?」

「ん、また別のお誘いか?」

「ちげーよっ、何かあのFIにさ、昨日不思議なプレイヤーがいたって話だよ。なんでも、NPCアイコンがついたキャラクターと一緒に戦っていたとかなんとか!」

「ブッ…!!」


 俺はそれを聞いた瞬間に、勢いよく吹き出した。昨日契約者について調べても出てこなかったってことは、もしや。


「ちょい貸せ!」

「ちょっ?」


 大樹からスマホを奪い、その画面をマジマジと眺める。



【FI】謎いプレイヤー、見つかる。

レス1 名無しのレス隊長

聞いてくれ。俺今日の夜FIプレイ始めたんだけどよ。やべぇプレイヤー見つけてしまった。


レス2 名無しのごんべえ

何それ、始めたってことは最初の村と森あたりでの出来事か? どした。


レス3 名無しの冒険者

kwsk教えろ


レス4 名無しのレス隊長

なんかな、森の方に行ったらNPCアイコンついたキャラと一緒にモンスターと戦ってる奴いた。

ちなみにNPCは猫耳生やした銀髪美少女だった、ちなみにレベルは5。それ以外は仕様でわからん。


レス5 名無しの盗賊

は? NPCを戦わせてるわけ? 何者なのそいつ。

しかも美少女とかw


レス6 名無しのごんべえ

>>5

勝ち組やんそいつw


レス7 名無しのレス隊長

いやまぁ良くわかんないけど、また見つけたら教えるわ

実証出来る奴いたら、やってみてくれ


レス8 名無しの冒険者

それは無理だろ。まぁ俺も明日の朝から森あたり探してみるわ。

少し気になるからな。


レス9 名無しのレス隊長

>>8

助かる。


「…」

「おーい、大丈夫か?」

「え、あ、あぁ、やべぇなそいつ」

「だろ? 謎が謎を呼ぶプレイヤーって感じで」


 間違いなく俺とユキの話だ、NPCの特徴も完全に一致している。知らない所でその様子が見られていたって訳だ。

 …もし俺がログアウトしていない間にユキがいなくなったりでもしたら大変だな。そんな事起きなければいいが。


「な、なぁ。一つ聞いていいか?」

「どしたどした?」

「あのゲームには、ペットとか、なんかそういう機能はあるのか?」

「うぅん? ペット…ってよりかは、使い魔なんかはいるな」

「使い魔?」

「おう、モンスターレンジャーっていう上位種のジョブが使役できる奴でな? 気に入ったモンスターを相棒として使役できるんだ。普段は敵のモンスターを使役できるっていうから、もうすでに人気も高いジョブキャラだぜ。俺も使った事がある」

「あるのか!? じゃぁさ、もし使い魔がいる状態でログアウトしたらどうなる?」

「え、え? あぁ…良く知らんが、まぁログアウト中は消えてるんじゃないかな、使い魔だし。そのままだったらそれこそやべぇだろ」

「あ、あぁ、そうだな」


 俺は安堵し息をつく。もしユキも俺がいない間は消えているとするのなら、誰にも取られないし勝手にどっかいくという事もないだろう。

 それにしても、モンスターレンジャーか。ある意味、味方がいると有用なスキルとか覚えそうだな、速いとこなってみたい所だが。


「モンスタートレジャーに興味あるのか? だったら俺が今度教えてやるよ、なれるのは少し先だろうけどな」

「おぉ、助かる」


 一先ず、ユキの事はゲーム内で大樹と会うまで黙っておこう。ここまで噂になってたら、あいつ何言いふらすか分かったもんじゃないからな。



 〇



「…ん、シノハ、おはよ…う?」


 で朝となり、小鳥たちのさえずる声が聞こえる。

 ベッドで横になっていた身体をぐいっと起こし、シノハのベッドを見やる。…が、そこにシノハの姿はなかった。


「シノハ? シノハ、どこ?」


 不思議といつの間にか呼び捨て口調になっていた。が、今はそんな事どうでも良かった。あのシノハが自分を置いてどっかに行くなんて、絶対に考えられなかった。

 だって、私と一緒に最強を目指すって言ってくれたから。


「…どこ、行っちゃったんだろう、さ、探さなきゃ!」


 私はいてもたってもいられず、急いで宿屋を飛び出した

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