このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(236文字)
不思議な出来事が徐々に転がり広がって、読者をぐいっと引っ張ります。〝懐かしく〟、とありますが、確かに懐かしさを感じます。松森氏の昭和レトロな家庭の方に。以降のネタバレを避けるべく、詳細はお読みになって確かめてみて下さい。最後が良い意味で刺さりました。携帯からゆえ、読みやすい縦組みにしましたが、そちらの方がレトロ感が増しました。横組みとの感覚の違いも、是非楽しまれて下さい。あと、タイトルが非常に好みです。
指が五本であるならば、指の股が五つになるなんてことは、あり得ない。僕は、思わず文章を二度見した。そして、ニヤリとしてしまった。これはしたり!見事に、こんな物理法則を無視した不思議空間に、わずか数行で誘われてしまった! 現実と幻想の境界をこともなく操る作者の力量には感嘆する。まるで、マジックのような錯覚を覚えるが、しかしてこの作品の中で、その歪は確かな現象として、物語の世界を狂わせる。この先は、ぜひ自分の目で読んで確かめてほしい。シュールな笑いが絶品の本作。もしかしたら、人は何かを諦めた時、力が抜けた笑いが出てくるものなのかも。
内容の不可思議さに、文章の確かさが掛け合わさり、すごく惹きつけられた。個人的には、文中で出てくる広告画面の描写へのこだわりに、くすりと笑ってしまった。『汐風ドレス』というタイトルも、物語の世界観を見事に踏襲していて、秀逸。
五話まで真剣読みあい企画の参加者です。拝見させていただきました。指の間を着眼点とした発想力が面白いと思いました。日常とファンタジーの融合が自然で無理ないものになっていると思いました。
なんだか怖さがあり、最初は笑えなかったです。私の企画にご投稿いただいたのですが、次々と意外さを積み重ねていく不思議な展開を見せる物語。冷ややかさ、美しさ、切れかかった糸で吊るされた天秤のようなアンバランスさの妙味に心を掴まれました。すごい作品です!
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