指が五本であるならば、指の股が五つになるなんてことは、あり得ない。
僕は、思わず文章を二度見した。そして、ニヤリとしてしまった。
これはしたり!
見事に、こんな物理法則を無視した不思議空間に、わずか数行で誘われてしまった! 現実と幻想の境界をこともなく操る作者の力量には感嘆する。
まるで、マジックのような錯覚を覚えるが、しかしてこの作品の中で、その歪は確かな現象として、物語の世界を狂わせる。
この先は、ぜひ自分の目で読んで確かめてほしい。
シュールな笑いが絶品の本作。
もしかしたら、人は何かを諦めた時、力が抜けた笑いが出てくるものなのかも。