ただの異世界転生もの…ではありません! どんでん返しが好きな方、ぜひ!

第一章 シュラ国編ラスト「第41話  スノースマイル」まで拝読しました。

いわゆる異世界転生ものかー、と思って読み始めたのですが、いやいや待て待て。何か違うぞ!!
舞台のからくりが判明するにつれて引き込まれ、気がつけばピンと背筋を伸ばして読み進めておりました。

主人公の千春は、もともと警察官をしていた青年。彼が異世界に勇者として召喚されたところから話がスタートします。
千春は王様に「魔王を倒しに行け」と言われて引き受けるも、備わっていた能力は「半透明になれる」というなんとも微妙すぎるもの。
この世界では現勇者が死なないと次の勇者を償還できないらしく、ショボパワーしかない千春は、最初の仲間だと思われた騎士・アシュレイにあっけなく殺されてしまいます。

主人公、死んでるじゃん!! と思ったら、なんと初めの召喚シーンからやり直し。
どうやら千春は記憶を保ったまま時間を戻されてしまった模様です。
話を進めるべく、千春は何度も序盤の展開をやり直すのですが、アシュレイの弱みを握って危機を脱したと思ったら、今度はパーティーに加わったはずの盗賊少女・ラナに裏切られ……何度かやり直しになってしまうのが面白かったです。

そして、千春の妹・千冬がこの世界に登場してからお話が急展開します。
実は、千春がいるのはVRゲームの世界。
現実の千春はゲームをしたまま意識を失い、中に閉じ込められたままログアウトできなくなっていたのです!
半透明になるというのはチート能力ではなく、ログアウトしようとしたのにできないというバグのせい。
最初は「半透明になれるとか、ギャグ?!」と笑って読んでおりましたが、この仕組みが分かったとき、「そうだったのかぁぁぁ!!」と唸り、少しぞくっと来ました。

とりあえずゲームをクリアすれば事態が打開できるのではないかと踏んだ千春たち。
ログアウトできる千冬をうまく使い、たびたび外界と行き来してヒントを集め、一人目の魔王をなんとか倒します。

一方で、ゲーム世界の話の合間に、現実世界で警官をしていた千春の話が挟まります。
千春はそこで笑子という女性と仲良くなりますが、ゲームの重要キャラ・アシュリー(アシュレイは彼女の男装だった)は、実はこの笑子だということが明らかに!
読ませていただいた第一章のラストでは、その笑子が死亡していることが明らかになってめちゃくちゃびっくりしました!

仲間だと思った相手に裏切られたり、実はゲームの世界だったり、実妹が出てきたり……。意表を突く展開が目白押しで、とても面白かったです!!
ライトノベルファンだけでなく、どんでん返しのあるミステリ―が好きな方にもお勧めしたい一作です。

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