生に寄り添い悲劇を喜劇に変える超人たちの爽快で沁みる冒険譚

 ニーチェ難しそうの壁を一瞬で取っ払ってくれるこの作品の最大の魅力は、ニーチェとして生きたひとりの人間への愛にも似た造詣の深さを、なんとも軽やかに冒険譚にして描き出す作者さまの心意気にあるでしょう。何より面白いのでサクサク読めてしまいます。生きることに絶望してる人にこそ届いて欲しい物語だと思いました。

 一読者としての私のニーチェに関する知的財産はほぼ皆無に等しいのですが、人生で一度だけすすめられて手に取ったニーチェの本をそのままそっと閉じた挫折経験のある者としては、この作品に出会えて大変幸運でした。

 素敵で粋なこの作品、ぜひご一読ください。