糸というのは無限の表現。そう感じる作品です。
主人公はカート君といって、精霊の言葉が絶対の国で精霊のお告げにより騎士になります。
困惑しながらも騎士として、そして人して成長する様は見ていてとても微笑ましいです。
また、ピアという魔道士がいるのですが、子供っぽい性格ながら国の未来を考えたり、カートの事を心配したりと、飄々としていながら何かと世話を焼いたり、焼かれたりと師弟もの特有のやり取りもあってとても和みました。
王道ファンタジーが好きな方、師弟ものが好きな方、ぜひ一度立ち止まりをご一読下さい。
きっとその先に、心を震わす世界が待ってますよ。
番外編を含む、最後まで読み終えました。
このお話は一人の庶民の少年カートが騎士に大抜擢され、物語が進んでいくのですが、その周囲に隠された秘め事の数々に、それぞれの人物の思いと様々な人間関係が織り成す国の成り立ちと行く末を舞台にしたファンタジー大作です。
バディものの戦闘シーンも非常に分かりやすく、綺麗に映像も浮かび上がってきて読み応えもとてもあり。
そしてこの物語にあるテーマ性にもとても心惹かれました。
今私達が暮らしている時代や国、生き方そのものが、もしかしたらもしかすると吊られて生きるようになっていないだろうか、もう少し、もうちょっとでも、頭を抱えてでも自分の意思で苦しみながらでも考えてみよう、と思える気付きを与えてくれる素敵な物語でした。
今を生きる全ての人達へ届けば嬉しいなと思います。
ある三人の人物の幼き日々から物語は始まる。そして、彼らの関係性を大きく変える出来事を経て、一人の少年へと物語のバトンは繋がれる。
ある日、その少年は庶民の身でありながら騎士になる事を、精霊からのお告げだと王女から任命され――――
この物語には、根幹となる大きなテーマが存在していると感じた。
それは「愛情」と「思考」だ。
受け取るだけの愛情ではなく、相互補完的な愛情。盲目的な崇拝ではなく、己を律し、時には感情のままに突き動かす思考。
それは、人間であるからこそ享受できる素晴らしい感情であり、生きる上での醍醐味だ。
それを作中では上手く描写され、時にはリアルに、時にはドラマチックに私たちの心にズシンと投げかけてくる。
己の信じるものは何なのか、愛する、愛されるとは何なのか。そう言った問いかけが、あたかも読者である私たちにまで届きそうなほど、作中の人物は懸命に、必死に、声を出す。
そしてその声が届いた時、物語はクライマックスを迎える。
紡がれてきた歴史、謎、彼らの関係性……それら全てが、読了後、余すところなく胸にストンと落ちるのだ。
最後になるが、今作は非常に満足度の高い物語である。
なのでぜひ一度、ご覧になられる事を強くオススメする。
テーマに関する伏線や情報が、それこそ傀儡を操る糸のように何本も何本も張り巡らされている作品。人形が人形を操ってると思いきやその上にさらに糸が伸びていて……。みたいな、どこまでも見上げるような「仕掛け」がある。
精霊に操られた国を舞台に、誰にも操られずに自分の意志で生きる少年と、その少年を温かい目で見る、「自分の意志で生きること」を願う魔導士の男性が織りなす、「自由へ」の物語。
「自由に伴う責任」や、「自分の意志で生きること」の大変さ、「誰かに盲目的に従うことの気楽さ」などを描きながら逆説的に「自在に」生きることへの希望を書いている。
ぜひ読んでみてください。そして、自分の気持ちに正直になって。
精霊の国と謡われる平和な国、ラザフォード。この国には精霊が住まう水晶木が植えられており、女王は精霊の声に従って国を統治する。
精霊の声を聞く代わりに平和を手に入れたラザフォード国だったが、その代償に、人々は自ら考えることをやめてしまった──
精霊の導きにより、ある日突然騎士に任命されてしまった少年カートの視点で物語は進んでいきますが、現宰相のヴィットリオをはじめとして、現女王であるグリエルマ、騎士団長のヘイグ、人形使いの魔導士ピアと、三人の幼馴染み達の運命も物語に複雑に絡みこんでいきます。
かなりテーマ性の深い物語で、ことあるごとに「精霊の言うことを盲信し、思考を放棄するのはどういうことなのか?」が繰り返し語られています。
物語の内容自体もよくできており、完結させてから連載しているのもあって物語に矛盾がありません。1章は登場人物が多いので、物語の全体像を把握するまでに時間がかかるかもしれませんが、そこで読むのをやめてしまうのは非常に勿体無いです。
各所に伏線が丁寧に張り巡らされており、最後の伏線回収も見事です。
読み終わってからも再読したのですが、「あ~これはあれだったのか~」と謎解きがすべて終わってから読むとまた違った面白さがありました。
自ら思考することを放棄してしまった者達が、愛するものの為に、自分の信じるものの為に支配の糸を絶ちきって行動していく姿には、心を揺さぶられます。
自分で自分の運命を決めるのは、自分の魂が叫んだ時。誰かを、何かを想う強い気持ちが、精霊の支配から彼らを解放していきます。
大きな選択であればあるほど、自分の意思で決断することは不安がつきまとうものですが、その時はぜひこの物語を読んでみてください。
運命に抗う彼らの姿に、きっと勇気をもらえるはずです。
水晶木という精霊の宿る木が選ぶ女王が統べる国ラザフォード。
その国で、三人の幼馴染の少年少女がとある秘密の場所で小さな黒いかけらを見つけるところから物語が始まります。
女王に一目惚れし、彼女に近づきたい一心で宰相にまで上り詰めた男。
次代の女王選定の儀式で、思わぬ運命に巻き込まれるかつての幼馴染の三人の男女。
父を知らず、母をも亡くした上に、突然精霊の導きによって騎士に任命された少年。
それぞれが見えない糸に操られるように、思わぬ運命に巻き込まれていきます。
精霊の言葉によって安寧を得てきた国で、人々はどのように生きていくべきなのか。国を治めるということは、あるいは、人を愛するということとは。
登場人物たちが投げかけるさまざまな問いは、読んでいるこちらにも深く突き刺さります。
個人的には、ひどく身勝手に見えたヴィットリオもまた、そもそもの初めから運命の糸に絡め取られ、けれど抗い続けてきたにもかかわらず、彼が選び取った運命を思うと、何ともやりきれない気がしてしまいました。
少しずつみんながすれ違ってしまっていったそれぞれの想いが、「あれ」の意思によるものなのか、あるいはいずれにしても避け得ない運命だったのか……。
とはいえ、自身もまた運命に翻弄されながらもまっすぐに立ち向かっていくカートと、彼を見守り、時には共に戦うピア、そして、何とも鼻持ちならない意地悪な少年だったアーノルドがふとしたきっかけで変わり、成長していったことで、たとえ困難が降りかかるとしても、自ら考え、行動を起こせば未来を切り開くことができる——そんな風に希望を感じることができた気がします。
丁寧に織り上げられた世界観と、複雑に絡み合った人の想いと、少年たちのまっすぐな意志と強さ。じっくりと読んで、ぜひ、この世界に浸って欲しい一作です。
おすすめです!
3作目ということで、期待して読みました。展開もスムーズで楽しく読み進められました。
上から与えられたもので、生活していく、楽で楽しいのかもしれない。でもどのようなものであれ、自分で決めて進んでゆくからこその、生活があるはず。何事も与えられた生活で満足できるほど、単純ではなくて、血を流してでも勝ち取らなくてはならないものもあるはず。
魔導士の操り人形が活躍しているけれど、操られているのは、むしろ普通に生活してるわたしたちではないのか?操られないために、地に足をついて真剣に真摯に生きていかないと、水晶木は枝を伸ばし気がつくと操られていることになりはしないかと、ふっと思った小説でした。
MACK さんワクワクをありがとうございます。