月に放つ魂。その美しさ、幽玄の極み。

あまりに鮮明に景色が浮かぶものですから、月に葬ることが本当にこの世に起こりうることなのだと錯覚してしまいました。私も死の先に送られるならこれが良い、と。

妹の、きっと姉は自分の思いなどに気付いてはいまいという諦観の中に、縋るような祈るような情熱を感じました。
それがとても切ない。

『月に葬る』という題名からわかる通り、これは葬儀のお話です。すべてが終わったあとの話。ですが、いや、だからこそと言うべきでしょう。彼女は愛する人の死の先にあるものを自分の思い通りにしようとしたわけです。

とても美しい、愛の物語。
ただただ風景を映すだけで、物事の真意は語られません。ゆえに私は、読後に思いを馳せました。
月を仰ぎ、彼女の願いが成就したことを願いました。

冴える紺青に緩やかに降り立つ白き光。
美しき《月葬》に読者として立ち会えたことを幸運に思います。

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