戦車には装甲。心には殻。それが破れると……

作者様は解説に書いていませんが、本作の主題は、ズバリ、心の殻。

戦車には装甲があります。というか、一方的に砲弾を撃ち込んで自分は守られる立場に居続けるために作られたのが戦車ですから、それはそれは分厚い装甲を備えている訳です。

手厚く守られてぬくぬくした環境にいると、人の心はどれだけ醜くなるものか。それは作中にしっかり描かれます。

では守りが弱かったら? 敗北を感じ取ったら? そこから人の心の強さが試されるんです。

戦車に乗っていれば顔は見えません。身元も分かりません。それでも操縦と砲撃から人となりが分かってきます。

固く身を守っている戦車が、閉じこもる人の心を比喩するものとして見事にはまっています。

ただ、戦車は装甲を破られたら負けですが、人の心は殻を破られてからが面白くなるもの。その対比は、作品を読んで確かめるようお願いいたします。

破られたら敗北か勝利か。恋の乱戦が幕を開けます。

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