不思議から滲む圧倒的重み、超速の物語展開。あと、平麺。

化け猫ユエの、長い旅の途中のお話。

どうしてユエが化け猫になったのか、どういう理由でそれが成立するのか、そのための代償とはなにか……。猛スピードで駆け抜けながら、ひとつずつ明かされていくそれらが、理解できればできるほどに切ない。

お腹に住み着く厄介なもののせいで、存在自体が危ういユエなので、どんなに満たされていても、いつ「なくなる」ことになるかわからない。喪失への不安と、だからこそ守りたい大事なものへの思いが、読み進めるほどに迫ってきました。
そしてユエは、強い思いを抱えて「おちる」。抱えているものの重さすら振り払うようなこのシーン、ユエの宿命に散々悲観させられた挙句のラストシーン。読み進めるごとに色味を変える物語世界ですが、着地するのがそこだとは思わなかったです。
しかしそれもまた長い旅の中で「なくなる」かもしれないことを知っているからこそ輝くという……最高。

読み終えてもまだいつまでもユエと相棒の旅について考えてしまう。全部不思議なのに、全部がリアル。彼らは本当にまだどこかを旅しているんじゃないかと思ってしまいます。

あとおいしい平麺について参考になる箇所がありますのでそこにも注目してほしいです。

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化け猫おちる

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