概要
最後の男は、雨に濡れた蝋燭のようだった。
駅前のコーヒースタンドからウィンドー越しに見る夜行バスの発車風景。一人の青年が最後に乗る瞬間、私は胸が切られるほどの痛みを感じた。バスは旅立つ。男を乗せて。遠のいていく私の夢。
ひとり残ったバス亭で、私はチケットを破った。
ひとり残ったバス亭で、私はチケットを破った。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!上手に生きられない私と、一歩を踏み出す者の美しい対比の物語
旅立つ者と、留まる自分。バスの待合所で美しく悲しい対比が描かれる。
私が暮らす湿った世界と、私が憧れる乾いた世界。
しなやかに動き出す旅人たちと、器用に振舞えない私。
踏み出す者と、踏み出せない者
最後の男と自分を重ね合わせるも、ガラス一枚が決定的に私とを隔てる。
まどろみの情景に身を委ねるのは甘い誘惑で、たとえ自分を誤魔化して身を任せることで、偽りの安心を手に入れられるかもしれない。
けれどもそれも、自分から手放してしまった。
留まることを選んだ私は、あきらめと後悔を抱えて生きていくのかもしれない。一歩を踏み出した男にとっても、旅立つ先は栄光の地ではない。濡れた蝋燭に存在意義などないのだか…続きを読む