旅立つ者と、留まる自分。バスの待合所で美しく悲しい対比が描かれる。
私が暮らす湿った世界と、私が憧れる乾いた世界。
しなやかに動き出す旅人たちと、器用に振舞えない私。
踏み出す者と、踏み出せない者
最後の男と自分を重ね合わせるも、ガラス一枚が決定的に私とを隔てる。
まどろみの情景に身を委ねるのは甘い誘惑で、たとえ自分を誤魔化して身を任せることで、偽りの安心を手に入れられるかもしれない。
けれどもそれも、自分から手放してしまった。
留まることを選んだ私は、あきらめと後悔を抱えて生きていくのかもしれない。一歩を踏み出した男にとっても、旅立つ先は栄光の地ではない。濡れた蝋燭に存在意義などないのだから。
どちらを選んでも救われないのなら、せめて雨が、悲しみを紛らわせてくれることを願って。