ツウィートしただけなのに⑧
―――ッ・・・。
―――誰?
どうやら男たちも想定外のことだったようだ。 顔を見合わせ戸惑っている様子を見せた。
「他にも誰か呼んだのか?」
「いえ、特には・・・」
「お前、見てこい」
ドアから一番近い男に顎を使って命令した。 とはいえ、警察を呼んだりはしていないため由佳たちにとって都合のいいことが起きる可能性は低い。
待っている間視線を感じそちらへ目を移すと、律奈が泣きそうな顔で訴えてきていた。
―――私も何も知らないよ!
由佳も心当たりがないため首を横に振る。 すると先程の男が戻ってきた。
「親分! 今来たのは、どうやら僕たちの仲間みたいっす!」
「仲間?」
「はい! 親分のツウィートを見て、参加したいそうで!」
そう言う彼の後ろからは複数人の男が顔を出した。 相手の人数が一気に倍になってしまう。 これは由佳たちにとって悪い方向へいってしまったとしか言いようがなかった。
縛られた状態で男たち6人から逃げられるわけはなかったため、あまり変わりはないとも言える。
―――嘘、増えた・・・ッ!
リーダーの男は彼らを試すように言う。
「ふーん・・・。 俺はゆーかちゃんのツウィートに場所名を載せていないけど、それでもこの場所を突き止めたということは俺たちと同類なんだな?」
その言葉にやってきた男たちは頷いた。
「なら混ざってもいいぜ。 人数増えた方が、眺めがいがあるかもな」
彼らをこの部屋に招き入れる。 すると新たな男たちの一人が急に由佳に顔を近付けてきた。 当然だが知っている顔ではない。
「ッ・・・。 何?」
「君がゆーかちゃんか。 ツウィッターに載っていた写メとあまり変わらないね? 凄く可愛い」
「・・・貴方は誰?」
「俺も君のフォロワーの一人だよ?」
「・・・」
「○○中学校の2年1組。 出席番号は11番の桜庭由佳ちゃん」
「ッ、どうしてそれを・・・!」
「調べたらすぐに分かることだよ。 いつも調べやすい居場所の写メを投稿してくれてありがとうね?」
「そんなッ!」
男たちは由佳のツウィッターの投稿から個人情報を調べ上げたのだ。 由佳もそういうことがあるという話を聞いたことはあった。 だが、まさか自分が巻き込まれるだなんて思っていやしない。
そういう人はかなり運が悪かっただけ、そう思っていたのだ。
「由佳ちゃんの住所と電話番号も知っているけど、今ここで言ってあげようか?」
「止めて!」
「ふふ、叫ぶ姿も可愛いね。 まぁ止めても今更だけど」
―――こんな人が私のフォロワーにいたの?
そう考えると気持ちが悪い。 男は次に律奈の前へと移動した。
「えーと、君は由佳ちゃんのリア友の律奈ちゃんだ」
「ッ・・・」
律奈は名を当てられ怯えている。 律奈はツウィッターをやっていない。 他のSNSを利用している可能性はあるが、由佳はそれを知らなかった。
となれば、おそらく律奈のことがバレているのも由佳のせいなのだ。
「最近、弟くんはどう? 元気にしてる? 律奈ちゃんはバレー部に入っているんだっけ? カッコ良いね。 丁度今、部活が楽しい時期かな?」
律奈は怯えて男から目が離せないようだ。 男はギロリと由佳のことを見た。
「これは全て、由佳ちゃんが律奈ちゃんの情報を投稿したせいだよ?」
「え・・・?」
「律奈ちゃん、友達選びには気を付けた方がいいかもね」
律奈の頭を撫でると今度はセナの方へと歩み寄った。 男は値踏みするようセナのことを眺めている。 ニヤニヤと笑うその顔が生理的に受け付けないと思った。
「君がセナか! 男の子だったんだ。 由佳ちゃんと同じで、俺も女の子だと思っていたよ」
「・・・」
「性別を偽って由佳ちゃんに近付いたの、流石だね。 でも君は自分の情報を全くネットに出さないから、調べようがなくて何も分からなかったよ。 そこはいい子だ」
セナは知らん顔するようにそっぽを向く。 話が一通り終わるとリーダーが言った。
「さーて。 撮影タイムの続きでもするかー!」
先程よりも過激な遊びが始まりそうだった。 別室から次々と見たことのない奇妙な道具が運ばれてくる。 ただ奇妙であるが、見ているだけでなんとなく嫌悪感を感じてしまうそれら。
それは律奈やセナも同じようで、三人の顔が次第に恐怖に染まっていった。 元々彼らは由佳のフォロワーだというのだ。
それなら一人くらいまともな人がいて、助けてくれてもいいのではないかと訴えたかった。 だがもしそうなら今の時点で何かしらの行動に出るか、そんな様子を出したりしているだろう。
それがないということは、彼らの中に由佳たちの味方はいないということだ。 少しずつ運ばれてくる道具や機材、それを無気力に眺めているとパトカーの音が聞こえてきた。
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