ツウィートしただけなのに⑦
由佳がメッセージを投稿し、スマートフォンを握り締めながら待っていると不安気に声をかけられる。 炎上していることは律奈たちには言っていない。
炎上という状況自体が由佳の中で恥ずかしく言えなかったのだ。
「由佳! 助けは呼べた?」
「え? あ、うん、一応・・・。 ツウィートはしたけど・・・」
「リプはどうなってる?」
―――あまり見たくはないんだけどな・・・。
そう思っても、今は見なければ仕方がない。 この状況を打破できるとしたら由佳だけだ。 息を整えるとツウィッターを開き確認した。
“攫われるのは自業自得じゃん”
“身体の不自由な人に当たるような思いやりのない人は、助ける価値なし”
やはりというべきか、炎上した空気をそのまま受け継いでいて批判的な言葉がズラリと並んでいる。 嘘をついて同情を誘おうとしている、といった心無い言葉もある。
だが、今本当にピンチに陥っているのだ。
―――・・・やっぱり、こうなるよね・・・。
―――どうしよう、数時間前にツウィートしたものが荒れて助けを呼べる状態じゃないとか、二人に言えないし・・・。
―――あ、そうだ!
―――冬真さんは!?
批判的な言葉の中から、一筋の光明をかけて冬真のものを探す。 唯一救いの手を差し伸べてくれそうな人。 だがどこにも見つからない。 いつもなら割と早くメッセージをくれるというのに。
―――そんな・・・ッ!
―――冬真さんがいないなんて、もう私はどうしたら・・・。
―――こんな私に呆れちゃったのかな・・・。
今攫われた状況よりもツウィッターが炎上し、かつての友人たちの言葉がないことの方がショックだった。 愕然とし、気付かぬうちに涙が滲んでいる横で律奈が肩を揺らしていた。
「由佳! 由佳、どうしたの?」
「・・・」
その時、勢いよくドアが開いた。 そこから複数の男が入ってくる。
「おいおいおいー! 縄を解いて勝手に何やってんのさ? そのスマホは没収ね」
そう言って由佳のスマートフォンを強引に奪い取る。 由佳は為すがまま渡してしまい、抵抗する素振りも見せなかった。 炎上してしまったスマートフォンなんていらない。
もう誰も助けになんて来てくれない。 そんな風にも思えてしまう。
「ほらお前ら、三人の縄を結び直せ。 これから俺たちと一緒に楽しむんだぞ?」
男たちを見渡すと先程の偽物のセナもいた。
「どうして・・・」
「どうしても何も、僕からよそ見した君が悪いんだよ。 よそ見をしなければずっと二人で楽しい時間を過ごせていたのに」
「・・・」
由佳は視線をリーダーであろう男へと戻した。
「どうしてこんなことをするの?」
「俺たちも、ゆーかちゃんの大切なフォロワーだよ? それなのにセナとだけ遊ぶのはズルいよねっていう話。 だからほら、俺たちとも遊ぼうよ?」
「嫌!」
「撮影ターイム!」
男たちは一斉にスマートフォンを取り出した。 三人はあらゆる角度から写真を撮られる。 両手は結ばれているため抵抗ができず泣きたくなった。
「おー、いいね、その顔。 あ、そうだ! さっきゆーかちゃんから奪ったスマホでツウィートしちゃおうかなー。 言い換えれば乗っ取り?」
「止めて!」
「いいねぇ、その泣き叫ぶ表情! そうだ。 君たちの今撮った恥ずかしい写真をこのままネットに晒してあげるよ」
「ッ・・・」
背筋がぞわりとした。 男はしばらく由佳のスマートフォンを操作する。
「・・・あれ、数個前のツウィートが炎上してんじゃん。 これじゃあ誰も助けには来ないわな」
「・・・由佳・・・?」
その男の言葉を聞いて律奈が反応した。 由佳は顔を上げられずずっと俯いたままでいる。
「よし、投稿っと!」
そうしてわざわざ投稿画面を見せてきた。 すると早速反応がある。
「ははッ、いいぞ! もっとやれ! だってさ」
「嫌、止めて・・・」
―――もうツウィッターには、私の味方をしてくれる人なんて一人もいないんだ。
そう思った瞬間、ドアの方から大きな音がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます