ツウィートしただけなのに⑨
「警察だ!」
その言葉にリーダーの男は焦り出した。
「警察だと!? 今すぐに逃げる準備をしろ! 証拠は何も残すなよ!」
おそらく男たちは大した覚悟もなく、こんな大それたことを実行したのだろう。 ちょっとしたお遊び、軽い気持ち、そんな風に思っていたのかもしれない。
それでも大人の男が子供たちを拉致監禁したとなれば罪は重い。 警察が来て捕まれば、まだ危害を加えてはいないといってもタダで済むはずがなかった。
「こんなものもういらねぇわ」
リーダー格の男はスマートフォンを投げるように放り捨てると、逃げるようにして部屋から去っていく。
―――スマホが戻ってきた!
―――でもこんな姿を晒されたんじゃ、もうツウィッターには戻れないよ・・・。
勢いよくドアが開き、本当に警察が入ってくる。 もちろん警察には連絡していないためここにやってきたのは呼んだからではない。
それでもその様子を見れば、由佳たち三人が捕まっているのを予め知っているような雰囲気だ。
「警察だ! 動くな!」
男たちは丁度裏から逃げていく。
「ッ、裏へ回った! 追え!」
無線で他の警察にそう言うと一人の警察が近付いてきた。 攫った男たちの姿もなくなり一安心する。
―――助かった・・・。
―――でも誰が通報してくれたんだろう?
警察は由佳たちの視線に合わせるようかがみ込んだ。
「君たちは、由佳ちゃんに律奈ちゃん、そしてセナくんで合っているかな?」
「ど、どうして私たちの名前を・・・」
「ん? ここの通報をくれた人からはそう聞いているけど」
「え?」
「名前は合っているんだよね?」
「あ、はい・・・」
「とりあえず何があったのか事情を聞かせてもらえるかな?」
三人の縄を解いてくれた。 あまり二人の前では言いたくなかったが、今日の出来事を全て話した。 律奈とセナは由佳が偽物のセナと会う前には、既に攫われていたらしい。
それを聞いて申し訳なくなった。 結局、全て自分が原因だったのだ。 セナは自分も悪いと言っていたが、由佳からしてみれば律奈を巻き込んでしまったという罪悪感が大きい。
謝っても謝り切れない程だ。
「分かった、話してくれてありがとう。 ちょっとここで待っていてね」
警察は一度ここから離れていった。 他の警察は室内をくまなく調査している。 その隙に由佳は二人に謝った。
「律奈、セナ、ごめん! 私のせいで、こんなに酷い目に遭わせて・・・」
「「・・・」」
二人は気まずそうに顔をそらした。
「律奈、ごめん! 私が無断で律奈との写メを投稿したのがいけないと思う。 おそらくそのせいで居場所を特定された」
「まぁ、そうだろうね」
「本当にごめん・・・。 もう絶対に律奈の写真を載せない。 載せた写真は全て消す」
「・・・いいよ、そんなに謝らなくて。 その代わり、ハニーカフェの蜂蜜パイを三つ奢りだから」
「・・・分かった」
律奈は真面目な顔をしていたが、今度はニコリと笑って言う。
「他の人の写真も載せちゃ駄目だからね? 自撮りを上げる時もこれからは気を付けて」
「うん、ありがとう・・・」
次はセナの方を見た。
「セナもごめんね、巻き込んじゃって」
「いや、会いたいと思ったのは僕も同じなんだ。 謝るのは僕の方だよ・・・。 男である僕が女子を危険な目に遭わせてはいけなかったんだ」
「男子だと思っていなかったよ」
「そ、そうだよね。 性別を偽っていたのが悪かったと思う。 ・・・ごめん」
「大丈夫だよ、セナは最初から私を騙そうとなんてしていない。 そう思っているから」
「ありがとう・・・」
セナは顔をそらして言った。
「実は僕、こんな容姿だから、クラスメイトからは『女の子みたい』って言われてよくからかわれるんだ。 親からも『女々しい』とか言われて呆れられるし、毎日嫌に思っていた」
「そうだったんだ・・・」
「だけどツウィッターで由佳と出会って、人生が変わった。 由佳と話すという楽しさを見つけたんだ。 だから僕が感謝をしたいくらいだよ」
「ッ、セナー! 大好き!」
「わッ!? びっくりした・・・」
由佳はセナに勢いよく抱き着いた。 それを律奈は呆れるように見ていたが、次に由佳が同様に律奈に抱き着いたため嬉しそうに笑っていた。 正直、間一髪もいいところだったとは思う。
それでもそれを乗り越え、絆は深まったと由佳は思っている。 だが気になることが一つだけあった。
―――でもどうして警察がやってきたんだろう?
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