「妖怪通りへようこそ」―水木しげるロード(鳥取県)
*このエッセイの関連写真を、「近況ノート」にあげています。また、挙げきれなかった妖怪像の写真を、私のTwitterに流しています。「#水木しげるロードの妖怪たち」でご検索下さい。
漫画『名探偵コナン』の作者・青山剛昌先生の回のとき、水木しげる御大についてさらりとご紹介しました。「コナン通り」をご紹介したのに「水木しげるロード」について述べないのは駄目だろう、と思います。
水木しげる先生は、今年(二〇二二年)生誕一〇〇周年にあたられます。鳥取県の西端・境港市ご出身です。
JR境港駅から『水木しげる記念館』前まで約六〇〇メートルが、「水木しげるロード」です。平成五年、私が学生時代にはもっと短く、妖怪像の数もささやかなものでした……。アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の人気に加え、奥様が書かれた『ゲゲゲの女房』がNHK朝の連続ドラマ化されて人気を
現在は、百七十七体の妖怪ブロンズ像、妖怪公園と妖怪神社(!?)、水木先生の記念館も整備され、美しい遊歩道となっています。
◇
私のような妖怪好きの為に、じっくりご紹介したいのですが――百七十七体ですからね! とても全部はご紹介できません。代表的なものに絞りますので、ご了承下さい。
「水木しげるロード」の観光ガイドマップは、境港観光協会の公式HPよりダウンロードできます。併せてお読みいただければ幸いです。
水木しげる先生の妖怪画には、鬼太郎と目玉おやじ、猫むすめとねずみ男など、水木先生オリジナルのキャラクターがあります。また、江戸時代の浮世絵師・
妖怪像は、水木しげる先生の画を立体化して表現しており、素晴らしく緻密で魅力的です(何度も盗まれています……。ファンの気持ちは理解できますが、犯罪はいけません)。
(1)さがり
岡山県
(2)砂かけ婆
神社の近くなどの寂しい森に潜み、通りがかる人に砂をふりかけて脅します。しかし、探しても姿はなく、足下を見ると一メートルほどの石があるばかり、とか。近畿地方の妖怪です。
(3)
みんな大好きな幸運をもたらす系統の妖怪です。金霊が入った家は栄え、出て行った家は滅びると言われます。雷のようにうなって飛んでくるとか、光り輝く鶏卵のような姿をしている、とか。
水木しげる先生が幼い頃にみかけた金霊は、十円玉の姿をしていたそうです。
(4)
『ゲゲゲの鬼太郎』では、鬼太郎を乗せて飛ぶ自家用ヘリコプターみたいに扱われていますが(^^ゞ 実は鹿児島県大隅地方の妖怪です。一反は約十メートル。夕方から夜にひらひらと飛び、見た目は洗濯物……。しかし、人の首に巻きついたり口を覆って息の根を止めたりするので、子ども達には非常に恐れられました。江戸時代、襲われた侍が刀で切ったところ、布は消え男の手に返り血がついていたそうです。
(5)べとべとさん
奈良県によく現れたそうです。
子どもが独りで夜道を歩いていると、誰かが後をついてくる足音がします。怖いので振り向くことも出来ず、我慢して歩いていると、冷汗がでて動悸がしてきます。道の傍らに寄って「べとべとさん、先へおこし」と言うと、足音は消えます。
また、提灯を持っているときに足音を聞いて「べとべとさん、先へおこし」と言うと、「先へ行くと、暗くて歩けない」などと答える場合があります。「提灯を貸そう」と言えば、借りて先へ行きます。
この提灯は、翌朝ちゃんと返されています。
(6)がしゃどくろ
野原でのたれ死にした人々の恨みが集まり、巨大な
『日本霊異記』に宝亀九年(七七八年)の出来事として、備後国(広島県)に住んでいた男の話が載っています。――ある日、この男が野宿していたところ、近くで「目が痛い」という声が聞こえました。夜が明けてから辺りを探すと、目に
(7)
人がほとんど足を踏み入れないような深山で、赤ん坊の啼き声がする。どうしたのかと思い通りがかった人が抱き上げると、赤ん坊はいきなりしがみついて離れなくなります。赤ん坊は重さが五十貫(約百八十八キログラム)から百貫にもなり、抱いた者は動けなくなって死んでしまいます。
徳島県や愛媛県に伝わる話で、バリエーションがあります。
(8)海坊主
日本全国の海に現れる妖怪で、海入道や海座頭などとも呼ばれます。一般的には巨大で黒く、光る目と
東北の海入道は、漁の
(9)
西日本に伝わる、牛の姿をした鬼です。
山陰地方では海に棲み、ときおり浜にあがって人を襲います。
四国では川に棲み、高知県高知市には
愛媛県宇和島市の
(10)
柳田國男氏の『妖怪談義』に載っています。福岡県遠賀郡の海岸に現れました。夜道を歩いていくと突然、前方に壁がそびえ、進めなくなります。棒で下の方をはらえば消えますが、上の方をはらっても駄目だそう。
水木しげる先生は、第二次世界大戦中、敵に襲われてジャングルの中を逃げている際にこの妖怪に遭遇しました。「気が動転したときに現れるようだ」と書いておられます。
水木しげるロードでは、はんぺんサイズになった可愛らしいヌリカベに会えます。
(11)
「小豆洗い」「小豆はかり」「小豆
小豆洗いは、夜の川辺や橋の下でショキショキと小豆をとぐ音をたて、時には「小豆とごうか、人とって喰おうか」などと歌います。全国に伝承がありますが、原則的に音だけで、姿は見えません。
小豆はかりは、昔、江戸麻布の武士屋敷の天井裏に現れました。夜中にどしどし天井を踏む音、パラパラと小豆をまく音、大量に小豆をばらまく音をたて、やがて庭の飛石を下駄で歩く音や手水鉢の水をかける音などをたてて騒ぎます。障子を開けても姿はなく、ときに土や紙くずを落とすこともありますが、それ以上の悪事はしません。
小豆婆は、小豆洗いと同類ですが、埼玉県川越市では子どもを食べるそうです。群馬県高崎市のあたりでは、強い光で通行人の目を眩ませますが、親指を握って気を静めれば消えてくれます。山梨県では通行人に「小豆おあんなすって(お食べなさい)」と話しかけ、相手が狼狽えると大きな
(12)
夜眠って朝起きると、枕が思いもよらない場所へ移動していることがあります。妖怪・枕返しの仕業です。
昔、ある旅館の主人が盲人を泊めたところ、この盲人は誰もみていないと思い、懐から金を取り出して数え始めました。大金をみた主人は、盲人を山道に案内して殺しました。それから盲人の霊は泊まっていた部屋に現れ、客の枕を返したといいます。
静岡県浜松市のあたりでは「枕小僧」といい、家に住み着く霊ですが、死者の霊ではありません。東北地方では座敷童が枕を返すと言われます。
昔は「枕返し」は不吉なこととされていたので、単なる悪戯ではないようです。
以前、HNK基礎英語でこの妖怪・枕返しのことを"pillow-flipping demon"と紹介していました。わが相方のお気に入りです。
◇◇
……もっとご紹介したいのですが、際限がなくなってしまいますので、この辺りで終了させて頂きます(^^ゞ
境港市と「水木しげる記念館」のHPには、写真が沢山ありますので、どうぞご覧ください。水木しげる先生の書籍もお勧めです。
JR境港駅前には、水木しげる先生が鬼太郎たちに囲まれて原稿を描いている銅像があります。他にも、世界妖怪会議の公園、妖怪ポスト、公園、神社など。ブロンズ像には、妖怪だけでなく大元神やタニググといった神さまもいらっしゃいます。
ラッピング電車や路線バス、「米子鬼太郎空港」など、水木先生の世界にどっぷり浸れますので、お楽しみください。
***
境港観光ガイド「さかいみなと、と」 公式HP:https://www.sakaiminato.net/
水木しげる記念館 公式HP:http://mizuki.sakaiminato.net/
参考図書:
「境港市観光ガイドマップ」境港観光協会
「決定版 日本妖怪大全―妖怪・あの世・神様」水木しげる(講談社文庫)
世界のかけらを集めて 石燈 梓 @Azurite-mysticvalley
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