きっと、桜の木の下で。

 よく「桜の木の下には死体が埋まっている」というが、この物語はそんな使い古された言葉を忘れてしまうくらい、優しい物語だ。
 女子高校生の主人公は、親友と学校に伝わる不思議について調べ始める。それらの不思議に出会い、彼らの心の内に触れるたび、主人公は心の痛みと共に成長していく。
 春にはオオカミ君。狼の着ぐるみの頭だけを被った不思議の一つで、放課後の教室に出没する。主人公は尾上君とノートのやり取りをしたことを思い出す。果たしてオオカミ君は、尾上君なのか。夏にはミイラ先輩。包帯を自分のアイデンティティにしてしまった、陸上部の先輩らしいのだが、何故先輩はミイラになってしまったのか。そのきっかけは小さくも心に刺さるものだった。秋には透明人間。体育館の不思議。声は少女のものだった。そして冬には――。
 春夏秋冬の不思議たちに託された伏線が、全て回収される時、「不思議」に隠された真実が目の前に現れる。その時、主人公は……。

 切なくも温かく、そしてどこか懐かしい。
 最後はこころにじわっと心に滲む優しい感情がありました。

 是非、是非、御一読下さい!

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