小さい頃、悪いことをした後は誰かに見られている気がしていました。
テレビで大家族の日常をおもしろおかしく追いかけるドキュメンタリーを見た影響かも知れません。
きっと自分もこんな風に誰かに見られている、そう思っていました。
大きくなり、そんなことは忘れていました。
でも、
この話を読んで、これはアリかなって思いました。
中学の頃、一年ぐらい部活でイジメに遭い、何もかもメチャクチャにして死んでしまおうと思ったがあります。
ある日突然、仲が良かった筈の友達だと思っていた相手からムシをされ、嫌がらせをされる。
後輩を含めて男子部員全員からイジメられました。
女子部員は見て見ぬふりです。顧問に至っては、協調性がないと注意されレギュラーから外されました。
こんな世の中なんて要らないし、自分も要らない存在だと思いました。
自分はなんで今いるのでしょう?
幽霊かな?
卒業して暫く経ち、同窓会に行った時、まるで何事もなかったようにイジメた相手が声を掛けてきました。
私をイジメていた意識がなかったのでしょう。殴ってやりたい気持ちの方を殺しました。
あの頃の悔しさや絶望感は死ぬまで忘れません。水に流すことなんかできない。
自分も知らず知らずに誰かを傷つけていることはあると思います。
でも、大丈夫。
後はイケメンの彼に任せました。
語り手である「僕」はとある女の子のスマートフォンから唐突に現れて、驚く少女に話しかけます。
明らかに人間ではない「僕」には目的があるようですが……。
インターネットが普及した現代では「何かをやらかした人間」は誹謗中傷が集中し炎上するという一面があります。
悪口を書き込む側は「みんながやっているから」と軽い気持ちですが、受ける側は数千人の悪意をぶつけられてしまいます。
一つひとつは小石でも、数千個もぶつけられた人間は激しく傷つくことになるわけで、そういう風潮を平気で見過ごしがちな現代人に「やられる側の痛み」を突き付けてドキリとさせる物語でした。
お薦めの一作です。