第8話

「あの、五十嵐さんはどんなジャンルの本を読むんですか?」

「ん?」


 放課後、いつものように図書室で仕事をしていると、小鳥遊さんがそんなことを聞いてきた。


「俺は、恋愛小説とかかなー。あんまり異世界もの読まないんだよね」

「そうなんですか?男の方は好きそうなジャンルですけど」

「全く読まないって訳じゃないんだけど、特に読むって訳でもないかな」

「どうしてですか?」

「あまりにも非現実だと共感できなくて。まあ、ラブコメとか恋愛ものも割とあるけど」

「確かに共感できるところが多い方が面白いですもんね」


 と、小鳥遊さんも同じように言っている。ここは俺も聞いた方が良いだろう。


「小鳥遊さんも恋愛小説とか好きなんだっけ?」


 前に借りているのを見ていたため、聞いてみる。


「そうですね、基本的には恋愛小説とか、たまにミステリーだったりも読みますね」

「色々な種類を読むんだな」

「はい。ミステリーなどに関しては、有名な本ばかりですけどね」


 そう言い、小鳥遊さんはまた本に視線を戻す。


 それを確認し、俺も本の整理や掃除をすることにした。




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「忘れ物はない?」

「はい。大丈夫です」


 図書室を閉める時間になったので、忘れ物などの確認をしてから図書室を出る。


「じゃあまた明日」

「あっ……。……はい、また明日」


 何だか言いたげに帰っていく小鳥遊さん。なにか聞き忘れたことでもあったのだろうか。


 ……まあ、それは明日にするとして俺も帰ろう。


 俺は鍵を閉め、生徒玄関に行こうとすると、いきなり肩を組まれた。


「?!な、なんだ?!」

「俺だよ俺。びっくりしすぎだ」


 声をかけてきたのは俺の数少ない友人、拓哉だった。なぜこんな時間にここにいるのだろう。


「ちょーっとだけ付き合ってくれよ優太」

「いやー、俺ちょっと腹痛くて……」

「逃げたらどうなるか、分かるよな?」


 不適な笑みを浮かべる拓哉。こいつには敵わないと感じながら、俺は黙って着いていくことにした。




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 着いた場所は学校の近くにあるファミレスだった。近くのテーブルに座り、ドリンクバーやポテトなどを頼むと、拓哉が聞いてきた。


「で、何が白だって?」

「い、いやあれは違う。たまたま小鳥遊さんが本を借りに来ただけであって」

「あんなに仲良さそうに喋ってたのに?」

「お前どこから見てたんだよ……」

「さあ?どこからでしょう」


 俺はジュースを一気に飲み干し、拓哉に聞く。


「で、どんな目的だよ」

「目的?そんなものないよ。ただお前をからかえる証拠を見つけて喜んでるだけ」


 そう言い、楽しそうに笑う拓哉。相変わらずいい性格してやがる。


「でも良かったな優太。見つかったのが俺で」

「どう言うことだ?」

「彼女の人気を考えれば分かるだろ?それにみんなは忘れたかもしれないけど、一回お前と小鳥遊さんが関わっているのはみんな知ってる」

「結局何に気を付ければいいんだ?」


 まだ、何を言いたいのか分かっていない俺にやれやれと言いながら話す拓哉。


「良からぬ連中に巻き込まれるなよ、優太」

「そういうことか。けど、そんな奴いたか?」

「誰もが優しい連中だけじゃないってことだけは覚えておけ」

「……分かったよ」


 俺達は頼んだものを食べ、店を出る。忠告通りにならないことだけを願いながら、俺は帰路に着いた。


 


 


 

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図書館によくいるあの子、学校で有名な美少女だった @1ya12ma2to

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