第5話
「はぁ~、だる」
今日も俺は放課後、委員会で残っている。本当は俺の当番ではないが、案の定交代したってところだ。
部活に一生懸命取り組むのは良いことだし、できれば邪魔したくはないのだが、俺も暇人って事ではない。
と、俺は部活動に取り組む生徒たちの声を聞きながら、受付で勉強していた。
と、そんな静寂の間に、ドアが開かれる音が室内に響いた。
誰だろうと思い、ドアの方向を見ると、つい最近見た人物がそこにいた。
「今日もお仕事お疲れ様です」
「……いえ、今日は交代でやっています」
最近何かと関わることが多かったため、多少は話を繋げることが出来る。といっても、本を借りに来ただけ、つまり貸し出しさえしてしまえばこの緊張感も解れる。
「あの、今日もお願いしても良いですか?」
「大丈夫だよ」
俺はこの前のように彼女の後についていき、本を取る。そして受付のところで図書カードに借りた本のことなどを書く。
「はい、またいつでも良いから」
「ありがとうございます」
彼女に本を渡すして仕事は終わり、と思ったのだが、何故か彼女は近くの椅子を取ってきて、そこに座り本を読み出した。
「あのー小鳥遊さん?ここで読むの?」
「はい、そうですけど、迷惑でしょうか?」
「いや、そんなことはないけど……俺邪魔じゃない?席外そうか」
「大丈夫ですよ。優しいんですね」
お世辞であっても美少女に褒められると、なんともむず痒くなってしまう。赤く帯びた顔を見られないように、俺は勉強を続ける。
「……本当に迷惑じゃないでしょうか」
と、いきなり小鳥遊さんがそんなことを言ってきた。
「迷惑?」
「はい、私がいるせいで仕事が増えたりして、勉強時間を削ったりしてませんでしょうか」
なんだか申し訳なさそうにしているが、俺も訂正しておく。
「全然迷惑なんかじゃないよ。むしろありがたいね。いつもはほとんど人なんて来ないから」
「でも……」
「それに、人が来ても来なくても、時間になるまでは変えれないからね。それに、静かなところで本を読みたいってのもわかるし」
「……ありがとうございます」
「どういたしまして」
そんな会話をし、小鳥遊さんは本を読み出す。それを見て、俺も勉強に専念することにした。
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「あ、もうそろそろ時間だ。小鳥遊さん大丈夫?」
「はい、大分読み進めることが出来ました」
「それはよかった」
俺は本の整理などをし、自分の荷物を整理する。沈黙が続かないように話を続ける。
「小鳥遊さんはどんなジャンルの本を読むの?」
「基本的には何でも読みますね」
「そうなんだ。特に好きなのは?」
「恋愛ものですかね。所々感情移入してしまいますね」
「へぇー、そうなんだ。小鳥遊さんも好きな人とかいるの?」
と、興味本意で聞いてみると、思わぬ返答が聞こえた。
「はい、いますよ」
「へぇーそうなんだ、やっぱりいるんだ……えっ!いるのか?!」
「そんなに驚きますか?」
小鳥遊さんは可笑しそうに笑う。
「さ、さすがに驚くよ。ていうか」
「ん?何ですか?」
「それ、俺に言っても良いの?」
一番驚いたのは、なぜ俺に言ったのか、というところだ。仲の良い人などならわからなくもないが、こんな俺に言っても良いのだろうか。
「私は大丈夫だと思ってます。あなたは人の嫌なことは絶対にしない人だと思ってるので」
何故か、多大なる信頼を寄せられているが俺はそんなに立派な人間ではない。だが、この事は秘密にしておこう。まあ、言ったとしても信用しないと思うが。
二人で図書室を出ると、ふと思い出したように訊ねてくる。
「あの、また来て話しかけても良いですか?」
不安そうな瞳をこちらに向け、答えを待っている。少し彼女は心配性なところがあるな。
「いつでも待ってるよ」
俺はそう答え、職員室に向かった。
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