彼の異世界は甘くない……!

親切な仲間に助けられ、ラッキーなスキルで楽々と困難を乗り越え、幸せな異世界暮らしをのほほんと謳歌する――そんな冒険をお望みであれば、この物語はお勧めしません。

なぜなら、華麗なる異世界転生物語の主人公になるはずだった“彼”――シュウを待ち受けるのは、何重にも張り巡らされた茨のような絶望だからです。

自身の仲間たちを屠った組織に加入させられ、そして今度は自分がその“任務”を遂行する側に組み込まれる。そんな非道が許されてたまるか!と反論できる余地さえなく、彼は圧倒的な組織の力によってその暗き道を歩かされることになります。

逃れられない状況で下された最初の任務、そして隠された依頼人たちの思惑。世界が単純なものではない何かに溢れていると気付いた瞬間、シュウは己の正義とは何かと葛藤しはじめます。

思いっきり苦しくてハードモード、なのに捨てられない人間性。
ヒリつくような緊張感、まとわりつくような絶望感。

それでもシュウは「とある信念」を持って抗っていきます。
光の道へと這い上がるか、闇の底まで駆け抜けるか……先の見えない物語は必見。


『平和でいいけど、毎日が少し退屈だな』と感じているあなたには特に特におすすめです。


――シュウもまた、そう呟いていた一人だったのですけれどね。

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