第12話 真一と優香…もうひとつの『幼なじみ』と『白線流し』の秘密②

真一がスマートフォンの動画アプリで『白線流し』のドラマを見始めて、3週間が経とうとしている頃だった。新型コロナウィルス感染症も『緊急事態宣言』解除から1ヶ月が経った頃でもある。季節はまもなく新緑の5月。


真一は旅行に出ることもなく、出かけても買い物くらいだった。


そんな中、真一は『白線流し』のドラマをスマートフォンの動画アプリで見ている。

ドラマの第9話を見終わったが、真一は何一つ収穫がなかった。真一が心の中でボヤく。



真一(このままやったら、もうドラマ終わってしまうなぁ…。やっぱり気のせいやったんかなぁ…。もし気のせいやったら、今度は逆に優香ちゃんのあの時の『顔(表情)』が引っかかるなぁ…。20年以上前の話、なんで今更…。時効が成立した事件のヤマをあさる、サスペンスドラマみたいに謎が深まってくるやんか…)



真一は自宅マンションで一人、昼食をとる。みつきの弁当を作ったおかずの残りと、インスタントの味噌汁を飲んだ。


昼食後、真一はウトウトと居眠りという名の昼寝をした。





(夢の中)

優香「なぁ、しんちゃん」

真一「うん?」

優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」

真一「…いや。オレ、ドラマあんまり見ないからなぁ…」

優香「そっかぁ…」



優香の顔が少し困った顔をしていたのを真一は見た。真一は『白線流し』というドラマのことで、優香が自分に何か言いたいのか…と考えた瞬間だった。そう思うと優香の顔色が悲しそうな顔をしていた。








真一は目を覚ました。


真一「出ましたなぁ、例の夢。やっぱりあの顔、何か言いたそうな顔してたなぁ。優香ちゃん、オレに何が言いたかったんや? 何が…? 『白線流し』…。今回は高山、松本は関係なさそうや。勿論、柏崎も。やっぱり、ドラマそのものに何かあるんかなぁ…。けど見ても、心当たりがない」


独り言を言った真一は重い腰をあげ、自宅の掃除にとりかかった。



翌日曜日、みつきも仕事は休み。みつきがまた撮り溜めていたビデオを見ている間、真一はスマートフォンの動画アプリで『白線流し』のドラマの続きを見始めた。1日1話ずつ見る真一、この日も1話だけ見る。今回は第10話を見る。



真一はずっと真剣にスマートフォンでドラマを見ている。今のところ、真一の『探し物』は相変わらず見つからない。



そして、第10話が佳境に差し掛かった時だった。




真一(これが言いたかったんか…)




真一は、ドラマを食い入るように見ていた。真一がドラマを見て、『探し物』を見つけたのだった。見つけた直後、ドラマはエンディングを迎えていた。最終話に続く。


同時に真一は、昔の記憶を思い出していた。


それは高校3年生の時の正月のことだった。元日、初詣から帰って来た真一は年賀状が届いており、家族別に仕分けていた。仕分けが終わり、自分宛ての年賀状を見る。優香からも来ていた。






(回想・優香からの年賀状)

『あけましておめでとう これからもよろしくね❗』

『いつも誰かを助けている真一くんはとってもエライです。これからも素直な心のままでいてね』









真一(あの時の年賀状のことやったんか…。だから、当時『白線流し』のドラマのこのシーンを見て思ったから、オレに話したかったんか…)




優香は年賀状で真一を気遣っていた。優香が当時、この時にできる真一への精一杯の気遣いと思いだった。真一は身に染みてわかっていた。




真一(高校最後の冬休みやったし、もうすぐ卒業…って時やったもんなぁ…。優香ちゃん、あの当時は森岡と付き合ってたから、彼氏おるのになぜかオレに何かぃ使ってたようやったし…。別に気ぃ使わんでもええのに…。幼稚園の時から優しかったし。優香ちゃんらしいなぁ…)




ようやく真一にも、もう一つの『幼なじみ』と『白線流し』の秘密がわかったのだった。



その後もみつきは録り溜めしていたビデオを見ていたので、真一はあえて、『白線流し』のドラマの最終回を10話に続けて見たのだった。


最終回も見終わると、今度は過去に何度かスペシャルドラマをやっていたようなので、翌日から手の空いた時に、何日かに分けて見る真一だった。



スペシャルドラマを全て見終わったのは、8月の終わりだった。



真一「やっと見終わったぁー」

みつき「よう全部見たなぁ。今時『白線流し』のドラマ見てるの、真一だけやで(笑)」

真一「まぁな…」

みつき「良かったですか?」

真一「そうやな…」



こうして、夫婦の会話も弾んだのだった。



ある日、真一は仕事で南町警察署に行った。


上田「堀川さん、この度は大変お世話になりました」

真一「いえいえ、こちらこそお疲れ様でした」

上田「草野呼びますわ」


上田が刑事の草野を呼び出した。しばらくして草野がやって来た。


草野「堀川さん」

真一「草野刑事」

草野「この度は大変ご協力いただきまして、ありがとうございました」

真一「いえいえ、でしゃばってしまい、申し訳ありませんでした」

草野「この前、高橋から連絡がありました」

真一「そうですか」

草野「あの子、幼なじみの女の子と付き合ってるようですね。堀川さんに『背中を押してもらった』と話していました。大学を卒業したら、結婚するそうですよ」

真一「そうですか」

上田「記憶喪失で一時はどうなるかと思いましたけど…」

草野「彼も苦労が続いていたので、幸せを掴んで良かった」

真一「えぇ…」

上田「堀川さん様々さまさまですなぁ(笑)」

真一「いやいや、高橋くん自身が掴みとったんですわ」




その頃柏崎では、高橋とひとみが話していた。



ひとみ「歩くん」

高橋「どうした?」

ひとみ「お昼ご飯、一緒に食べよ。お弁当作ってきた」

高橋「うん。ありがとう」

ひとみ「歩くんの好きなコロッケもあるよ(笑)」

高橋「マジか?」

ひとみ「うん。歩くん、昔からコロッケ好きだよね(笑)」

高橋「うん。幼稚園の時、ひとみの弁当に入ってたコロッケがおばさんの手作りのコロッケで、ひとみが少し分けてくれて、食べてめちゃくちゃ旨くて…」

ひとみ「お母さんが作ったコロッケ、ホントに好きだよね(笑)」

高橋「変わらないよなぁ(笑) いつ食べても飽きないなぁ」

ひとみ「じゃあ、食べよ」

高橋「うん」

ひとみ「歩くん…、あーん…」

高橋「え? あーん…」


高橋はひとみにコロッケの食べさせてくれた。


高橋「うん、これこれ。旨いなぁ…(笑)」

ひとみ「ホント? 良かった(笑)」

高橋「え? コロッケ、おばさんが作ったんじゃないの?」

ひとみ「実は…、今日は私が作ったの。お母さんにレシピ教わったの」

高橋「そうなんだ」

ひとみ「これから、この味は私が引き継がないと、2人で生活するときに必ず食卓に出すからね(笑)」

高橋「ひとみ…。ありがとう。やっぱりオレのとなりにはひとみじゃないとダメだ。いつも、どこでも、どんな時も、オレのとなりにはひとみがいないとダメだ。大好きだ、ひとみ」

ひとみ「うん、ありがとう。私も幼稚園の時から歩くんが大好き(笑)」



高橋とひとみはキスをした。その後、『2人の世界』が始まった。『2人の世界』は翌朝まで続き、『幼なじみ』以上に絆が深まっていったのだった。










(完)

第三弾につづく

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“幼なじみ特別編”第二弾 不器用な男~旅情編③『記憶喪失の男』 まいど茂 @shinchan17

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