第11話 真一と優香…もうひとつの『幼なじみ』と『白線流し』の秘密①
真一は柏崎駅に戻り、電車に乗る。
帰りの電車の中でもずっと、高校時代、そして先日夢でも優香に言われた『白線流し』のことで考えていた。
(回想・夢の中)
優香「なぁ、しんちゃん」
真一「うん?」
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一「…いや。オレ、ドラマあんまり見ないからなぁ…」
優香「そっかぁ…」
真一が心の中で呟く。
真一(あの時優香ちゃんは、一体オレに何が言いたかったんや? 何が…?)
真一は鞄の中から『白線流し』の本を取り出し、本を読み返していたが、思い当たる節はない。
真一(待てよ…)
(回想・夢の中)
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一(ドラマか…。そういえば、スマートフォンの動画アプリで、ドラマを見てる途中やったなぁ…)
真一は、自宅に戻って時間のあるときに『白線流し』のドラマを見ることにした。
ある土曜日、真一はいつものように朝、妻のみつきが仕事の為、みつきの弁当を作って、みつきを玄関で見送る。
みつき「じゃあ、行ってきます」
真一「行ってらっしゃい」
真一とみつきは『行ってらっしゃい』のキスをして、みつきはマンションを出る。
真一はようやく朝食をとる。朝食後、買い物に行くためにスーパーが開店するまでの間、スマートフォンの動画アプリで『白線流し』のドラマを見る。途中までしか見ておらず、高橋とひとみのことがあって、ドラマのことをすっかり忘れていた為、はじめから見直すことにした。
真一は動画でドラマを、暇なときに1日1話ずつ見ていくことにした。
しかし、優香が真一に言いたかったことは何も見つからない。真一は呟く。
真一(何も見つからんなぁ…。ただ単に『見てるか?』って聞いただけやったんやろか…。それにしては、あの顔、オレに何か言いたそうやったしなぁ…)
(回想・夢の中)
優香「なぁ、しんちゃん」
真一「うん?」
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一「…いや。オレ、ドラマあんまり見ないからなぁ…」
優香「そっかぁ…」
真一(難儀な優香ちゃんやないか…。もう20年以上前のことやのに…。なんでこの期に及んで『白線流し』やねん? そもそも、最近ほぼ毎日高校時代のことが走馬灯のように夢で見てたこと自体、どうかしてるけどなぁ…。ホンマにこのコロナ禍、どないなっとんねん(どうなっているんだ)?)
真一はこの15年程、優香とは全く会ってもいないし、いま優香がどこにいるのかも知らない。最後に真一と優香が会ったのは、真一が甲状腺ガンで手術し、退院から4ヶ月が経過し、真一が年賀状を出して優香から『会いたい』と返事があって、幼稚園近くのファミリーレストランで4時間もしゃべったあの日だった。
真一はその後も『白線流し』のドラマをスマートフォンの動画アプリで見ていた。物語は進むが、真一が『優香が真一に何か言いたそうなこと』は相変わらず見つからない。真一は心の中でボヤく。
真一(何も見つからんなぁ…。やっぱり何も無かったんかなぁ…。あったのは、スピッツが歌う主題歌『空も飛べるはず』が頭の中でリピートされてることくらいや…。気のせいやったかな…)
ある日真一は、仕事中に真一より年下のパート女性社員の米田に聞いてみた。
真一「米田さん」
米田「はい」
真一「ドラマって、よう見る(よく見る)?」
米田「まぁまぁ見ますね」
真一「そうかぁ…。昔『白線流し』っていうドラマやってたん、知ってるか?」
米田「『白線流し』、見てましたよ。私、小学生でしたけど…(笑)」
真一「あ、そう(笑)」
米田「クラスの友達が、主人公役のアイドルのファンだったこともあって、話のネタで見てました(笑)」
真一「そうなんや…」
ある日、真一の高校の同級生で、当時生徒会長をしていた大村からLINEが来たときだった。真一は大村にも聞いていた。
真一『大村さん、昔「白線流し」っていうドラマ見たことあるか?』
大村『「白線流し」か? 見てたで❗ あれは私らの時代の青春ドラマやんか❗ どうしたん?』
真一『ちょっと、なんやかんや(なんだかんだ)あって、オレ高校時代、ドラマっちゅうもんは(というものは)見たことないから、この期に及んで動画アプリで見てるんや』
大村『そうかぁ…。20年以上も経ってから「白線流し」見てるのは、堀川くんくらいやなぁ(笑)』
真一『まぁなぁ…(笑) コロナ禍で「stay home」してるから、こんなときやなかったら、こんなん(こんなドラマ)見ないからねぇ…』
真一が呟く。
真一(どこもかしこも見たことあるんや…。そんなに有名なんや、このドラマ。ということは、優香ちゃんは高校時代のあの時、オレにブームみたいなもんやから、ただ単に聞いただけやったんかなぁ…。けどそれにしては、聞いてきた後、オレに何か言いたそうな顔してたんやけどなぁ…。そやけど今、動画アプリで見てても、そのような場面はないで。やっぱり、ただの気のせいやったんかなぁ…)
真一はドラマを8話まで見ていた。次は9話目を見る。この日は土曜日。真一は仕事が休み、みつきは仕事。毎週のように、みつきの弁当を作って、キスをして送り出し、朝食を食べて、スーパーの開店までの間にドラマの続きを見る。ドラマは粛々と進んでいくが、真一の『探し物』は見当たらない。ドラマも佳境を迎える様相となってきた。
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