暴力てんこ盛りのハードコア冒涜的BLノワール

 暴力組織も兼ねる教会『主の岬』の神父と見習いコンビが、孤高の暗殺者〝蛇〟と激突するお話。
 エンタメ上等なガンアクション活劇の第二弾です。単話の短編とはいえ設定的には連作ですので、前作『ガン・オン・グレイス』とあわせて読むとより楽しめるかと思います(作者ページからどうぞ)。
 ものすごく乱暴に要約してしまうのなら、『やたら癖のある(そして顔のいい)男たちが、大量の銃火器を振り回してはちゃめちゃに殺し合う物語』で、とどのつまりはゴリゴリの大衆娯楽作品です。いいところは山ほどあるのですけれど、すべて〝エンタメ〟の一語で説明できてしまう——というか、あらゆる美点がその一点に向けて徹底されているところが、本作最大の魅力であるように思います。
 特筆すべきはやはり設定の明瞭さ、言い換えるなら「設定を見ればどう楽しむべきお話かわかる」ところです。『暴力組織としての裏の顔を持つ教会』というのは前作の時点でも明らかなのですけれど、今作では敵対組織についても描かれており、より組織同士の抗争という面にクローズアップされています(前作はどちらかといえば主要人物同士の出会いに主眼が置かれていた)。
 畢竟、登場人物の数も多くなるのですが、魅力的なのはその立場や抱えたものの違いがはっきり伝わるところ。要は事実上の群像劇なのですが、彼らひとりひとりのキャラクターがしっかり立っているという以上に、それが作劇上の役柄に囚われていないところが最高でした。わかりやすく言うなら、「全員死なせるには惜しいのに、なんか全員いつ死んでもおかしくない感じがする」ような読み心地。この人物の肌触りと、そして暴力の出し惜しみのなさが魅力でした。
 個人的に好きなのは、本来敵役に当たるはずのジュージが、単話としての主人公役を担っている点。これは彼の物語であり、にもかかわらずシリーズの主人公たるふたり(ウィステリオとハーブ)もしっかり活躍しているところ。特にこのハーブ神父、人格的にはわりとどうしようもないところのあるキャラクターで、なんなら「もう彼が死んでハッピーエンドでいいのでは?」くらい思わせるところがあるのに(ごめん)、でも気づけばなんやかや彼のことを応援させられている、というのがもう本当に小憎い。またこのハーブ神父の突き抜けた人物造形に対して、読者の代弁者的立ち位置たるウィステリオくんの存在がまた構造的に安定しているというか、わずか二作目にしてすでにコンビ感が出ているのがすごいと思います。なにこの夫婦。熟年感すごい。おしあわせに!
 なんだか普通にキャラ萌えについて語っているみたいになってしまいましたが、総じて頭を空っぽにして楽しめるど直球のエンタメ作品だと思います。ちなみにこのレビューを書いている時点で既に三作目・四作目(スピンオフや外伝ではあるものの)が上梓されており、今後も作品世界が広がっていきそうなのも嬉しいところ。この先も楽しみにしています。

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