登場人物がみんな生きています。その眼差しも、口元のしわも、声も、映像をみているように伝わってくるようです。
その丁寧な心理描写も、人物に合わせて文体が変わるのですが、魔法のように自然で面白い!!
気づけばどっぷり感情移入し、次の話ではまた誰か別の人物の気持ちに掴まれている。そして好きになっちゃっています。
人が恋に落ちる瞬間に遭遇してときめいたり、どうにもならない、ぶつけようのない想いに一緒に泣いたり。
その背景には戦争があり、人間の綺麗じゃない部分が生んだ闇が起こすサスペンスがあり。入り乱れる人々の感情と、事件が絡まっていく様子に息をのむ。
そんななかで確かにみえる煌めき、人の人生を彩る光が、読む人の心に必ずや射しこんでくることと思います。
他のレビュワーさんが仰る通り、物語に説得力を持たせる世界設定は緻密で、正直頭が追い付かないところもありましたが、いいんです。お優しい作者様は許してくださいますし、解説してくれる優秀なスパイ先生も登場します。
この壮大で、でもささやかであっていい、愛の物語を心よりお勧めします。
……伝われ~~!
統合幕僚本部政務局国際部欧州室室長代行兼欧州1課課長、代将一等艦佐石動涼子。
これが作中に登場するヒロインの名前だ。肩書を思いつくまでに、どれくらいの時間を費やしただろうか……そして、文字数90万を超える大作に仕上がるまで、何年を費やしただろうか……作者さまの愛が詰まった逸品を、1話1話紐解いていく時間を、是非とも持っていただきたい。
読み始めは、難解なミリタリーワードで戸惑うかもしれないが、これが読み進めていくうちに自然と見慣れてしまう。どんな肩書でも、どんな軍事用語でも、どんなキャストネームでも、気づけば「あぁ、それな~」とティーカップを片手に軽々と読めてしまう自分の成長を感じることすらできる。
何よりも、作者さまの気合いの入った各キャストに対する思い入れが凄い。ちょっとしか出番を与えられていない者ですら、読み手に外見的イメージやその人の性格などを想像させてくれる丁寧さに驚くことだろう。ここまで深い愛情を注がれた作品は、なかなか見かけることができないと思う。
とにもかくにも、涼子ちゃんの魅力を素直に堪能して欲しい。そして、彼女を取り巻く仲間たちに向けて、色々と共感して欲しい。幸せとは何か、愛とは何か、得られるもの得られないものは何か。そして、欲しいものが手に入らなかった者たちのサンクチュアリはどこなのか。
愛宕はこの作品を拝読して、とても幸せな気持ちになりました☆
「硬質な文章で綴られるスペースオペラ」の皮を被った、「嫉妬と愛憎に燃えた乙女達のラブロマンス」の皮を被った、「セピア色の軍人恋愛墓標」を象った、『美しきヒロインを皆が愛でる話』といった複雑なストーリー構成を、しっかりと練られた展開とキャラ設定で濃厚に仕上げた作品です。
テーマはたぶん「愛」でしょうか。甘くも切なく、時に毒々しいまでにトゲトゲしい心象。優しさは罪にもなるし、愛は憎しみを生む。愛を紡ぐ為の人間らしく、人間だからこそ行き着く「愛」の形を、余す事なく表現された『星三つ』では足りない程の作品で御座います。
しかし、難点が一つ。少し難解な事。視点が頻繁に変わるため、その時のメインとなるのは誰か、そして時間軸はどうなっているのか。この点を抑えるとモールスコードの世界が広がるハズ。そして、硬質に描かれた文体が沁みることでしょう。
と、偉そうに書きながらも、先日に完読したばかり。しかし、遅読ながらも行き着いたラストは鳥肌もので、感動に次ぐ感動。できれば、このレビューを読んで頂いてる方にも、この感動を味わって頂きたい、その一身で書かせて頂きました。
どうぞ、皆様もお手に取って読んで下さい。きっと素敵な時間を過ごせることでしょう。
胸に刺さる物語でした。
ひとりのキャラクターをこれだけ掘り下げた作品は、滅多にないと思います。あるときは妖精、またあるときは天使、そして本当の彼女は……。
軍務、政界の構成。現代的な街並み、とても未来的な宇宙戦艦。どれを取っても細かく書かれていて、疑問を挟む余地がありませんでした。
ちょっとした台詞。そのひとつからでも感じられるキャラクターの思惑。読者が考えることを前提とした作中のかけひき。
読みながら唸り、称賛を贈り続けたものです。
またこの作者が書いた作品を読みたい。
そう思わせるに充分な、面白さと楽しさと実直さに溢れた物語です。
本作を読み終えたあと、
この作品と別れるが辛くてしょうがなかったです。
いまでも続きが読みたい、彼女の物語をもっと読ませて、
そんな風に渇望してしまう、本当に名作中の名作です。
レビューを読む前にお願いです。
私のレビューが響かなくても、この作品に目を通してください。
絶対に、絶対に損はさせません。
カクヨムで出会った中で、私のトップ3に入る最高の作品です。
この物語は、現在よりも少し文明が進んだ世界で、
ある女性の恋と仕事を描いたSF恋愛小説です。
全体の主軸となる涼子は、
お話しを通じて辛い経験や職場の問題を乗り越えていきます。
でも、それは決して簡単じゃありません。
私はこの作品を読みながら、
彼女が間違いやすれ違いを経験しながら、
誰かのために胸を痛め、時に大胆に行動し、
困難に打ち克っていく姿をいっしょに体験しました。
不器用ながら彼女を見守る大切なひと、
抑えきれない想いを解き放つ同僚、
登場するすべての人に、ドラマがあります。
人にはそれぞれ生涯があり、想いがあり、経験があります。
人間を描く――それをここまで丁寧に描いた作品に出会えて、
最後まで彼女の旅を見届けることができて、本当に幸せです。
このレビューを書くのに、すごく時間がかかりました。
どう表現しても、多くのひとにこの作品を読んで頂けるかが不安で、
いまからでもぜんぶ消して、また書き直したいくらいです。
もしこのレビューで興味を持って下さる方がいらしたら、
できたら以下の内容を心に留めて、読んで頂きたいです。
・縦読み推奨です
・落ち着いた環境で、リラックスして読んでください
・できれば静かな夜に、好きな飲み物を添えて
本作はきっと、すてきな大人の時間を約束してくれます。
恋愛小説ですが、それ以外の要素でも楽しめます。
ハヤカワ文庫が好きな方なら、まず間違いありません。
さて、こんなにいろいろ書いたのに、
私は最後まで作品のタイトルにもなっている、
モースルに言及していません。
ぜひ、答えは作品のなかで探してみてください。
きっとあなたも、素敵な恋がしたくなるはずです。