化けの皮がハンパない

「硬質な文章で綴られるスペースオペラ」の皮を被った、「嫉妬と愛憎に燃えた乙女達のラブロマンス」の皮を被った、「セピア色の軍人恋愛墓標」を象った、『美しきヒロインを皆が愛でる話』といった複雑なストーリー構成を、しっかりと練られた展開とキャラ設定で濃厚に仕上げた作品です。

テーマはたぶん「愛」でしょうか。甘くも切なく、時に毒々しいまでにトゲトゲしい心象。優しさは罪にもなるし、愛は憎しみを生む。愛を紡ぐ為の人間らしく、人間だからこそ行き着く「愛」の形を、余す事なく表現された『星三つ』では足りない程の作品で御座います。

しかし、難点が一つ。少し難解な事。視点が頻繁に変わるため、その時のメインとなるのは誰か、そして時間軸はどうなっているのか。この点を抑えるとモールスコードの世界が広がるハズ。そして、硬質に描かれた文体が沁みることでしょう。

と、偉そうに書きながらも、先日に完読したばかり。しかし、遅読ながらも行き着いたラストは鳥肌もので、感動に次ぐ感動。できれば、このレビューを読んで頂いてる方にも、この感動を味わって頂きたい、その一身で書かせて頂きました。

どうぞ、皆様もお手に取って読んで下さい。きっと素敵な時間を過ごせることでしょう。

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