第7話 ハーピークエスト6

「我が名はケライア。偉大なる風の眷属である。我らが王子を連れ去ろうとする貴様達は何者だ?」


 ケライアと名乗るハーピーがシズフェ達を見降ろしながら言う。

 ハーピーは女面鳥身、つまりは顔から胸までが人間の女性で、翼と下半身が鷲である。

 非常に素早い魔物だ。そして、別名で「掠める者」とも呼ばれている。

 そのハーピーが目の前にいる。

 シズフェはハーピーがいるだろうとは思っていたが、実際に会うとどうして良いかわからなくなる。


「なぜ、何も答えない? むっ?」


 ケライアの視線がノヴィスへと向く。


「もしや、お前らも我らに王子を提供しに来たのか!? しかし、駄目だ。その男は成長しすぎている。どうせ、連れて来るなら線の細い可愛い子を連れて来い!!」


 ケライアは首を振って答える。


「別に鳥女に好かれたいとは思わないが、何かムカつくな」


 否定されたノヴィスは不機嫌そうに言う。

 いくら好きじゃない相手とはいえ、拒否されたら嫌な感じがするのは仕方がない。


「確か、ハーピーの生態をまとめた本によると、ハーピーは本能で攫いやすい少年を好むらしいよ」

「えっ!? そうなの? まあ良いけど……」


 マディが説明するとシズフェは戸惑う。

 なるほど、確かに攫うなら重い大人よりも軽い少年の方が楽だ。

 ハーピーは本能的に、線の細い可愛い少年を好むのだろう。

 しかし、それでも納得できない何かがあった。


(それにしても、今ハーピーはお前らもと言った。もしかして……。いや、やはりフィネアスは攫われたんじゃない。ハーピーに売られたんだ。では誰が売ったの? いや、そんなのはわかりきっているよね……)


 シズフェは思考を巡らせる。


「ごめんなさい。ケライアさん。ちょっとした手違いで、連れて来る子を間違えたの、だから、今そこに、いる子を返してくれないかな? 後でもっと良い子を沢山連れて来るから」


 シズフェはとっさに嘘を言う。

 勝てるとは限らないので、戦いは避けたかったからだ。


「何? しかし、お前はこの子を連れて来た者と違うではないか」

「後でワルラスさんが説明するわ。私達は先にその子を受け取りに来たの」


 シズフェが言うとケライアが目を瞑る。

 そして、数秒の後、突然目を開く。


「駄目だ。お前から、かすかな敵意を感じる」


 ケライアは厳しい目をシズフェ達に向ける。


(しまった! 敵意を感知された!)


 シズフェは心の中で舌打ちをする。

 ケライアは翼である両腕を広げる。


「みんな! 武器を構えて! 来るよ!!」


 シズフェが叫ぶと全員武器を構える。

 その時だった。

 突然ケライアの姿が消える。


「シズフェ!!!」


 ケイナの叫び声。

 危険を感じシズフェは咄嗟に体を右に捻る。

 すると右肩に激痛が走る。

 シズフェが右肩を見ると肩当てが斬り裂かれ、そこから血が出ている。


「大丈夫ですか? シズフェさん!!」


 レイリアはシズフェに駆け寄ると治癒魔法をかける。


「大丈夫だよ。レイリアさん。でも危なかった。以前の私なら首を掻き切られていたよ」


 シズフェは右肩を押さえて言う。

 シズフェは女神レーナによって身体能力が上がっている。

 にもかかわらず避ける事が出来なかった。

 その事にシズフェは戦慄する。


「ほう、避けたか。手始めに貴様の首を落してやろうと思ったのだがな」


 ケライアは空中を飛びながら嘲笑する。


「はあっ!!」


 掛け声と共にノーラは弓を放つ。

 しかし、ヒラリと躱される。


「ふん! そんな矢があたるか! これでも喰らえ!!」

「みんな! 私の後ろに!!」


 ケライアが翼を羽ばたかせると次の瞬間、その翼から羽が矢のように飛んで来る。

 しかし、その羽矢フェザーアローはシズフェの作り出した盾に阻まれる。


「ほう。やるな」


 ケライアは感心した声を出す。

 その顔には余裕がある。シズフェは何だか馬鹿にされている気分になる。


「おい、どうするシズフェ。ああも空を飛ばれていたら、俺の剣は届かねえ」


 ノヴィスは焦った声を出す。

 さすがのノヴィスも剣の届かない相手にはどうすることもできない。

 もちろんシズフェだって、どうすれば良いかわからない。


「貴様らのような、地べたを這うしかないメス共に空を舞う高貴な種族が負けるものか」


 ハーピーは高らかに笑う。


暗闇ダークネス!!」


 笑っている所をマディが魔法を放つ。


「なぬっ!!」


 ケライアの驚いた声。


「嘘!? 効いたの?」


 マディは驚く。

 実はマディの魔力は弱く、魔法が相手に効かない事が多いのである。

 ケライアに効いた事が信じられないのである。

 視力を奪われたケライアはふらふらと飛びながら周囲を旋回する。


「くそが!! よくもやってくれたな!! 覚えていろ!!」


 さすがに目が見えない状態では戦えないだろう、ケライアはこの場から飛んで逃げる。


「やったよ!!私の魔法が役に立ったよ!!」


 マディは飛び上がって喜ぶ。

 シズフェはそれを見て少し不憫に感じる。

 しかし、ここは素直に喜ぼうと思う。

 それは仲間達も同じで全員でマディを褒める。


「やったじゃねえか! マディ!!」

「すごいですわ! マディアさん!!」

「やるじゃないか!!」

「さすがマディだ」

「えへへへへへへへ。本でハーピーは闇に対する耐性が弱いって書いてたけど、こんなにうまくいくとは思わなかったよ」


 マディは後ろ頭を掻きながら照れる。 


「やったじゃないマディ。でも、みんなそろそろフィネアス君を助けてあげましょ。ハーピーが戻って来たらまずいわ」


 そして、シズフェの言葉で仲間達は現実に戻るのだった。






「大丈夫ノヴィス?」


 シズフェは心配そうな声を出す。

 頭上ではノヴィスがフィネアスを背中に括りつけながら縄を伝って降りて来ている。


「大丈夫だ、シズフェ。こいつ軽いから」


 ノヴィスは下にいるシズフェを見て「ニッ」と笑う。

 程なくして2人は降りてくる。


「大丈夫、フィネアス君?」


 シズフェ達はフィネアスに駆け寄る。

 フィネアスは線の細い男の子で、顔立ちも女の子みたいである。


「はい、何とか。一応僕は大切にされていましたから……」


 フィネアスは笑って答える。

 ハーピーは捕えた少年を大切にする。

 しかし、ハーピーと人間では生活の環境が違いすぎるのだ。

 ハーピーの生活圏で人間が生活するのは厳しすぎる。

 その事はハーピーもわかっているらしく、なるべく山の麓に監禁したりする。

 しかし、それでも人間にとっては厳しいものになるだろう。

 ノヴィスのような頑健な体を持った者ならともかく、こんな線の細い女の子みたいな少年では耐えられないに違いない。

 現にフィネアスはかなりやつれている。

 彼が攫われてから1週間以上が経過しているため着ている服もボロボロだ。

 体調も悪いみたいなので、急いでアルム王国に戻るべきであった。


「ノヴィス、フィネアス君を抱えて。急いで戻るよ」

「ああ、わかった。ちょっと我慢しな」


 そう言ってノヴィスはフィネアスを抱える。


「すみません……」

「別に構わねえよ。今更文句はない。ただし、お前は立派な戦士になれ。困っている人がいたら、それを守れる男にな」


 ノヴィスは笑ってフィネアスに笑いかける。

 基本的にノヴィスは気のいい男である。

 ここまで来て今更文句は言わない。


「はい、わかりました。僕はあなたのような立派な戦士になります」


 ノヴィスの言葉に感動したのかフィネアスははっきりと答える。

 しかし、フィネアスの頬が少し赤くなっている。

 何だか少し妖しい雰囲気であった。


「みんな行くよ」


 シズフェ達は急いで来た道を戻る。

 そして、夕方頃には巨人の遺跡へと戻って来る事ができた。


「みんな。止まれ」


 巨人の遺跡を前にしてノーラは仲間達を止める。


「どうしたの? ノーラさん?」


 シズフェはおそるおそるノーラに聞く。


「待ち伏せだ。例の奴らだろうな」


 その言葉にシズフェ達は目配せをする。


「みんな。武器を構えて」


 シズフェが言うと仲間達は武器を取る。


「あの、どうしたのですか?」


 ノヴィスの背中から降りた、フィネアスは不安そうな声を出す。


「多分、この先にワルラス達が待ち構えているの」

「!!」


 フィネアスは小さく悲鳴を出す。


「だ!? 団長がですか!?」

「そう。あなたをハーピーに売った人達」


 シズフェは断言する。

 謎であった。

 なぜ、あんな人里に近い所にハーピーはフィネアスを捕えていたのだろう?

 なぜ、フィネアスを捕えていた所まで簡単に行けたのだろう?

 フィネアスが捕えられていた場所は人間の国から近すぎた。

 だが、攫われたのではなく、同じ人間に売られたのなら話は別だ。

 むしろ、人間が来やすい場所である事に意味がある。

 おそらく、あの場所はハーピーと取引する場所だったのだ。


「隠れてないで、出てきな! お前らがいる事はわかっているぞ!!」


 ケイナは巨人の遺跡に向かって叫ぶ。

 すると、武装した男達が14、5人程出て来る。

 シズフェはその男達の中心に居る者を見る。

 間違いなく新緑の戦士団の団長ワルラスであった。

 その少し後ろには魔導師キリウスが立っている。

 船の中で見かけた、少年達はいないようである。


「ふん! バレちゃあ、仕方がねえな。まあ、エルフがいるのなら、ごまかせねえ。それにアトラナ様から貰った黒妖犬ブラックドッグを倒すとはな」


 ワルラスは敵意をシズフェ達に向ける。


(やっぱり、黒妖犬ブラックドッグはワルラスの配下だった……。おそらく、他の者がフィネアスを捕えている所に、行かないようにするための番犬だったのね)


 シズフェはマディの言葉を思い出す。

 あの場所に行くためには、巨人の遺跡で野営をするのが普通だ。

 ハーピーの取引場に誰も近づけないようにするための番犬だったのだ。


「やっぱり貴方が、フィネアス君をハーピーに売ったのね?」

「ああ、そうだぜ、戦乙女のお嬢ちゃん。それにしても、そんな何の値打ちもねえ餓鬼を助ける奴らがいるとはな、とんだ物好きがいたもんだ。こんな事なら、そいつの母親にハーピーに攫われたと言わずに、魔物に喰われたと言えば良かったぜ。そうすりゃ誰も探さねえ。俺もまだまだ甘いな」


 ワルラスはフィネアスを見ながら、にやにやと笑う。

 後ろを見るとフィネアスはワルラスの視線から逃げるようにシズフェ達の背中に隠れる。


「ちょっと待ちなさいよ! 同じ人間でありながら、同じ人間を売るなんて何を考えているの!!」


 シズフェはそう言って、剣を抜くとワルラスに向ける。


「ふん! 人間を売るねえ? はん! それが、どうした! アリアディア共和国を見てみろ! 戦いもしねえ、ズルい奴らが良い暮らしをしてやがる! この世はな! ズルい奴が良い思いをするんだよ!!」


 目をギラギラとさせてワルラスが叫ぶ。

 その目が訴えているのは怒りであった。

 シズフェもその気持ちは、わからないでもない。

 魔物により国を失って、放浪して、自由都市テセシアへと流れ着いた。

 そして、アリアディア共和国を見たときに思ったのだ。

 こんなにも大きな国があるのかと、こんなにも豊かなに暮らす人々がいるのかと。

 だけど、同時に思った。

 ズルいと。

 シズフェの生まれた国は豊かではない。

 いつも、魔物に脅かされていた。

 なのに、アリアディア共和国市民の人々は魔物に襲われもしないのに、立派な城壁の内側で暮らしている。

 あんな立派な城壁があれば、シズフェは故郷を失わなくてもすんだかもしれないのだ。

 だから、ワルラスの気持ちも何となくわかるのである。


(だけど……。だからと言って同じ人間を売って良いはずがない!)


 シズフェは後ろのフィネアスを見る。

 フィネアスは、シズフェと境遇が少し似ている。

 同じように父親を亡くし、同じように自由戦士になった。

 シズフェはケイナがいたから運が良かった。

 自由戦士になったばかりの頃、ケイナが助けてくれなければ、すぐに死んでいただろう。

 だけど、フィネアスは人に恵まれなかった。

 入った戦士団は最初からフィネアスを売る気だった。

 戦士になった以上は死を覚悟しなければならないのが原則だが、この場合は違う。


「あなたの過去に何があったのか知らないわ! だけど、フィネアス君を魔物に売って良いはずがないわ!!」

「うるせえ! 小娘が利いたふうな口をきくな! 俺達の方が数が多いんだ! おまえらやるぞ!!」


 ワルラスが言うと新緑の戦士団の者達が武器を取る。


「フィネアス、見てな。これから本物の戦士って奴を教えてやるよ」


 ノヴィスはフィネアスに笑いかけると、大剣を構える。


「ノヴィスの言う通りよ。あんな奴らに私達が負けるものですか」


 シズフェも同じように笑う。

 騎士、兵士、自由戦士。

 これらは皆戦士と呼ばれる。

 戦士は魔物から人々を守るために存在する。

 本来、守るべき人間を魔物に売る。

 しかし、シズフェの目の前にいる者達は戦士ではない。

 ただの外道だ。

 そんな奴らに負けるわけがない。

 シズフェ達とワルラス達は武器を構え対峙する。


「シズちゃん……。導師様は強いよ」

「わかっている」


 キリウスはワルラス達からかなり離れた後ろにいる。

 導師の称号を持つ魔術師は油断できない。

 シズフェ達は油断なく構える。


「野郎共やれ!!」


 ワルラスの仲間の内5人の男が弓を構えて、矢を放つ。


「そんな矢が効くものですか!!!」


 シズフェはレーナの加護で魔法の盾を作る。

 矢は当然、盾に阻まれて落ちる。

 次の矢を構える前にシズフェ達は距離をつめる。


「くそ! 次の矢を!!」


 ワルラスが叫ぶ。

 もちろん、そんな暇を与える訳がない。

 ノーラが速射で弓を構えようとしている人を狙い撃つ。

 そして、足の速いケイナが相手に突っ込み、次に大剣を構えたノヴィスがワルラスの仲間を薙ぎ払う。

 2人の活躍により、瞬く間に半分が倒される。


(弱いわ。これなら、真剣に戦おうとしていたゴブリンの方が強い)


 シズフェの思った通り、ワルラス達は弱かった。

 動きから、戦士としての鍛錬をほとんど積んでいないのがわかる。

 それどころか、中には酒を飲んでいるではないかと思われる者もいる。

 戦いを舐めているとしかシズフェは思えない。

 おそらく、魔物と戦わず、卑怯な事ばかりしていたのだろう。

 だから、いざという時に戦う事ができないのだ。


「くそ! 魔術師の旦那! 助けてくれ!!」


 ワルラスと残った者達が魔導師の所へと逃げる。


「団長、私は戦いを好まないのだがね。しかし、まあ仕方がないか。出て来い」


 キリウスが言うと後ろら巨大なローブを被った何かが出て来る。

 巨大なローブが床の下へ落ちる。中から出てきたのは全身を甲冑で固めた大男。


「これは、我が師タラボスが作った最強の不死者アンデッド戦士だ。そして、この鎧には陽光を完全に遮断する効果がある。君達に勝てるかな?」


 そう言うとキリウスは笑う。

 自身の連れて来たアンデッドの強さに絶対の自信があるのだ。


「さあ、目の前の奴らを殺せ!!」

「あっ?」


 甲冑の戦士が剣を振るうと前にいたワルラスの首が落ちる。


「しまった。そういえば団長達が目の前にいたか……。この戦士はまだ開発中で融通が利かず、命令の変更が難しいんだ。不運だと思って諦めてくれ」


 少しも悪いと思ってなさそうな口ぶりでキリウスは言う。

 ワルラス達の命など何とも思っていないようであった。

 甲冑の不死者アンデッド戦士が目の前にいたワルラスの仲間を殺していく。

 その動きはとても早い。


「助けて!!」


 ケイナとノヴィスに吹っ飛ばされたワルラスの仲間が助けを求める。


「どうしますか? シズフェさん?」


 レイリアは困った顔で私に聞く。


「仕方がない。助けるわ。でも、後でしかるべき場所に突きだすからね!!」


 シズフェ達はワルラスの仲間を庇うように前に出て不死者アンデッド戦士と対峙する。


「ガアアアアアアア!!!」


 不死者アンデッド戦士が剣を掲げて突っ込んで来る。


「こなくそ!!!」


 ノヴィスは前に出ると大剣を構え迎え撃つ。

 ガキン。

 剣と剣がぶつかり大きな音を出す。

 両者の力は互角。

 互いに押し合っている。


「馬鹿な! 最強の不死者アンデッド戦士を止めただと!!」


 キリウスは驚く声を出して慌てる。


「ノヴィスがこんな木偶人形に負けるわけないわ! 頑張ってノヴィス!!」


 シズフェはノヴィスを応援する。


「シズフェに言われちゃ頑張らないわけにはいかねえな! 俺がこいつを倒す! みんなはあのクソッたれ魔導師を倒してくれ!!」


 背中越しにノヴィスが笑っているのがわかる。

 ノヴィスと不死者アンデッド戦士の一騎打ち。

 剣と剣がぶつかり合う。

 一見互角に見える。

 だけど、シズフェはノヴィスの勝利を確信している。

 だから前に出て魔導師に迫る。


「くっ! 悪霊ラルヴァよ! 我が呼び声に集え!!」


 時刻はもう夕方だ。影が濃い場所なら悪霊を呼びだす事ができる。

 呼びだされた半透明の悪霊ラルヴァが一つに集まり、青白く光る玉となる。


「死霊魔術! みんな意識を強く持って!!」

「遅い! 狂い死ぬが良い! 悪霊群体レギオンよ、死の叫びを上げよ!!!」


 悪霊群体レギオンよ、死の叫びは精神を直接攻撃してくる。

 もし、抵抗できなければ、狂い死んでしまうだろう。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


 悪霊群体レギオンの死の叫び。

 シズフェ達は意識を強く持つ。


( 負けるものか!! レーナ様!! 私に力を!!)


 シズフェは女神レーナに祈る。

 心が張り裂けそうになりながらも、シズフェは悪霊群体レギオンを斬り裂く。

 シズフェの魔法の剣の攻撃で悪霊群体レギオンは霧散していく。


「魔導師は?!」


 悪霊群体レギオンが消えてレイリアが叫ぶ。

 レイリアの言うとおり悪霊群体レギオンの後ろに隠れていたキリウスの姿が見えない。

 逃げたようであった。


「追うか? シズフェ?」


 ケイナが自慢の脚を触りながら言う。


「駄目よ、ケイナ姉。深追いは危険だわ」


 シズフェは首を振る。悔しいが無理はできない。今日はここで野営だ。


「大丈夫だ、シズフェ。あの魔導師は彼女が捕えるだろう」

「えっ?」


 ノーラが遠くを見ながら言うとシズフェは驚きの声を出す。

 まるで意味がわからなかった。


「おりゃああああああ!!」


 シズフェは叫び声がしたので後ろを見る。

 そこには不死者アンデッド戦士を斬り捨てるノヴィスがいる。

 どうやら勝ったようだ。

 シズフェ達はノヴィスの所に戻る。


「すごい。これが本物の戦士」


 フィネアスが感動したように目を潤ませて、そう呟くのだった。





 森の中をキリウスは走る。


(くそ! まさか、こんな事になるとは思わなかった!)


 キリウスはシズフェ達がこんなに強いとは思わなかったのである。

 急いで逃げなければならない。

 キリウスは来た道を戻る。


「くそ! 偉大なる魔術師である私がなぜこんな目に!!」


 キリウスは歯ぎしりする。

 行きは不死者の戦士に運ばせたから楽だった。

 だが、今は自分の足で走らなければならない。

 普段体を動かさないキリウスにとってとても疲れる事であった。


「止りなさい」


 突然、後ろから声が聞こえた時だった。キリウスの足に激痛が走る。


「なっ?」


 キリウスは叫び、訳がわからないまま倒れる。

 

「魔術師キリウスさん……だったかしら?」


 突然キリウスは後ろから名を呼ばれる。

 キリウスが顔を何とか後ろに向けると、夕日に照らされた女が1人立っていた。

 その女の手に持つのは曲刀。

 キリウスはその曲刀で足を斬られたようであった。


「なっ、何だ? お前は?」

「私はシェンナ。もっとも、覚えてもらう必要はないけどね。ずっと後を付けていたのに気付かなかった?」


 シェンナと名乗った女はそう言いながら曲刀をしまう。


「もし、シズフェさん達が危なくなったら加勢するつもりだったけど、必要なかったわね。それにしても、すっごく、足が遅いのね。ゆっくり追いかけたけど簡単に追いつけちゃったわ」


 シェンナは馬鹿にしたような顔でキリウスを見る。


「私をどうするつもりだ」

「もちろん、しかるべき人達に付き出すわ。魔女狩人とかね。覚悟しなさい」


 その言葉を聞いてキリウスは震える。

 魔女狩人は悪魔や邪神と契約した者を狩る者達だ。

 彼らの追及は容赦がなく、拷問の果てに死んでしまうらしい。


(なぜ、私がそんな目に会わねばならないのだ!? 何と不条理なのだ!?)


 キリウスは天を仰ぐ。

 前方から姿を現す人間でない者達が姿を現す。

 直立した巨大な蜥蜴。

 リザードマンと呼ばれる魔物であった。

 そのリザードマン達がキリウスを取り囲む。

 

「さあ、お願いね、リザードマンさん。その人を運んでね」


 シェンナは事務的な声でリザードマンに指示を出す。

 その声にキリウスは震えるしかなかった。


★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★


 さて、次でシズフェ編は終わりです。


 改めて前の見ると文章めちゃくちゃですね。

 訂正しても変ですが……。

 下手なりに執筆を続けようと思います。

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