飛んでこそ

 鳥が生まれて初めて羽ばたくときはどんな心境だろう。初めて操縦桿を握ったパイロット候補生なら似たような気分になるのだろうが、己の肉体で成し遂げようとするそれは人間には理解できない領分があるに違いない。

 本作における二人は、私が読んだ限りでは飛ぶに飛べない人間と飛んだつもりになりたかった(のを自覚している)人間である。そこに必要なのはむしろ言葉だった。正確には、心に紐づいた言葉だった。心が翼で言葉が羽根である。

 真の自由を獲得した二人はついに羽ばたく。