道ってのはどこかに繋がってるもんだ。だから走り続けてみるしかないのさ


 いつもの配送ルートで、立ち往生している車に気づいてブレーキを踏んだ大型トラックのドライバー巽。彼は困っている様子のサイカという美女を助けてあげることにした。それは彼女が美人だったからではない。そんなことは断じてない。
 だが、それが大きな間違いだった。
 彼女に言われるまま荷物を取りに行った巽は、その荷物が幼い男の子であり、自分がなにやら犯罪の匂いがする行為に加担させられていることに気づく。
 そして、サイカという美女は彼に銃を突き付けて、こう言うのだ。

「騒いだら撃つ」

 彼女に脅され、荷物である男の子を運ぶことになる巽。だが、ほどなく追手がかかり……。

 トラック・ドライバーのおっさんと訳あり美女、そして可愛らしい男の子の三人が、福島から九州、そしてふたたび福島へと長距離の呉越同舟。そんな彼らを追う敵はなにやら強大で、実力行使も厭わない。おまけに拳銃も所持している。
 最初は脅されてしぶしぶ従っていた巽だが、美女の事情と男の子の状況を知るうちにだんだんと彼らをなんとかしてあげたいと思うようになるのだが。

 世の中にはどうにもならないことがたくさんある。そんなことを山ほど経験してきた巽。そのどうにもならないことに抗い、無茶をしているサイカ。そして、何やらその存在自体に秘密がある男の子アトリ。
 訳あり過去あり事情ありの三人を乗せてトラックは行く。

 どうにもならないことを承知で、それでも前に進むしかないおっさんトラッカーと、運命に抗うように突っ張る訳あり美女。
 やがて惹かれ合う2人ですが、まるで遠く離れて光と影を投げ合う地球と月のように、互いに輪を描きつつもその距離は決して縮まりません。
 彼らは過酷な運命に飲み込まれようとしている幼い少年を救うことができるのか。爆音をあげて突き進む先に、明るい未来はあるのか。
 その道の先にある景色はきっと、走り続けてみなければ目にすることはできないものなのでしょう。
 軽快に走る大型トラックの、爆音と振動に味付けされたロードムービーのような小説です。



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