好きな人への想いを断ち切るためだけに、一度きりの優しさに温もりを求めた

 登場人物は四人。
 互いに想い合いながら確かめ合えないふたりと、すれ違う想いをそれぞれが抱えたふたり。
 青春と言ってしまえば、聞こえはいいが、この物語は甘酸っぱくは進んでいかない。

 想いを確かめ合えない、ふたりを寄り添わせようと画策するヒロイン。自身の熱い想いを封印して……。
 それを手助けする主人公。自身の想いはひた隠しにして……。

 わたしと、さほど歳の変わらないふたり。想いの叶わなかったふたりが、それぞれに求めたのは……。
 ヒロインのこういう縋り方もあるのか。主人公のそういう受け入れ方もあるのか。
 でも、それでは、ふたり、共に幸せにはなれないだろう……と、思わざるを得なかった。

 納得するために晒す体温と、忘れさせるために求めた温もりが交わる時、そこに、せつなさだけが取り残されないことを願いたい。
 おとなの恋愛小説だった。

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花火