極限の世界で生きる女兵士達の物語。


人に憑りつき害を成す極小の微生物・クラウドと、その厄災から逃れるべく懸命に抵抗を続ける人類との、先の見えぬ戦いが行われている世界。
戦術機動機甲「コクーン」のオペレーターである主人公・カルハと、そのパイロットである相棒のセンが、共に任務を遂行する中で、ある疑惑に巻き込まれ、さらに危険な任務へと赴く事になる――というお話です。
正体不明の敵と戦う中で消耗した人類が、既に先の見えぬ状況に陥っている事を自覚しているカルハは、己の存在や行動に意味を見出せず苦しんでいるのですが、実際のところ、その悩みは人間として普遍的なモノではないかと感じられ、この極限の世界にあっても、カルハへの感情移入は容易であり、故に作品の世界観に没入しやすい構造となっております。
そしてカルハのパートナーであるセンの発言や行動原理は、この物語の謎とリンクしており、なぜセンがここまで頑なに難度の高い行動を取ろうとするのか、目的は何なのか、その想いと行動原理を探るという、カルハの視点を通して追うセンの姿は、謎めきつつも魅力的で、お話の推進力として機能しています。
スケールの大きな、奥行きのある世界観でありながら登場人物の数は少なく、それだけにカルハとセンの思考や言動にくっきりと焦点が当てられており、読み易い仕上がりです。
SFギミック的な描写も非常に興味深く、特異な機構を持つ兵器「コクーン」の戦闘シーンは手に汗握るモノを感じます。(個人的にはマシーネンクリーガー的な形状を想像しておりました)
何もかもが不透明な中、カルハとセンがどの様な回答を得るのか、この行き詰った世界でどんな風に生きようとするのか、非常に品の良い、一読の価値ある作品だと感じた次第です。

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