第20話 魔王のレリーフ
ノームが完成させてくれた小屋の前に立つ。
屋根はあるが、壁は一面のみの小屋だ。
魔物に使ってもらうにはこれが最適だ。
「それで小屋なんか作ってどうするんだ?」
小屋の前でラウルは俺に質問をした。
「この小屋を魔物に利用してもらう」
「いや、そうだろうとは思ってたけどよ……そんな簡単に上手くいくもんか?」
「ああ、畑を荒らしに来る魔物は毎回同じだ。だから、この作物をこちらから与えてやればいい」
「えっ、なんで荒らしに来る魔物が同じだって分かるんですか?」
サーニャが言った。
声色には少し驚きが混じっていた。
「魔物は自分で食糧を調達するのが基本だ。それこそ食糧の調達に生活の大部分を占めていると言っても過言ではない。だから、畑のような必ず食糧がある場所というのは、魔物にとって大変都合が良い。そのことに気付いた魔物は味を占めて何度も畑を荒らしにやってくる、って訳だね」
俺も前世で自家農園を作ったとき、こういった経験があった。
そして荒らしに来る魔物は、毎度同じ奴だった。
前世では魔法で結界を張り、魔物が侵入出来ないようにしたが、今回は逆に利用させてもらう。
「……なるほど、言われてみれば確かにその通りかもしれませんね」
「でも魔物がこの小屋を利用してくれるか? そんなところ全然想像出来ないぜ」
「ああ、ラウルの言う通りだ。普通に小屋を建てただけでは魔物は見向きもしない。しかし、このアイテムがあれば魔物が小屋に住み着く確率は大きく跳ね上がる」
俺は【アイテムボックス】から[魔王のレリーフ]を取り出す。
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[魔王のレリーフ]
初代魔王ザクレアの姿が彫り込まれたレリーフ。
魔王ザクレアは多くの魔物を支配下に置き、初めて魔物の王になった者である。
彼の姿が彫り込まれたレリーフには魔物を魅了する強い魔力が宿っている。
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そして俺は[魔王のレリーフ]を小屋の中に立て掛けた。
これで後は農作物を床に設置すれば、魔物を支配下に置くことが出来る。
この辺りに住む魔物は低レベルであるため、[魔王のレリーフ]の魅了に抵抗することは出来ないだろう。
「これで魔物が住みついてくれるのか……? なんか少しお洒落になったようにしか見えねえな……」
「……お洒落になりました?」
ラウルの発言にサーニャは首をかしげた。
「お洒落になったかはともかく、一旦これで様子見だな」
説明するよりも結果を見てもらった方が早いだろう。
「んー、まぁアルマが大丈夫だって言うんなら大丈夫だろ」
「うーん、確かにさっきの魔法は凄かったですけど、このレリーフに魔物が住み着くだけの効果があるとは中々思えませんね……」
サーニャはあまり納得していないようだった。
たぶんこれが普通の反応だろう。
「あれ、お姉ちゃん? どうしたの? そんなにジーッとレリーフを見て」
「……これ、凄い魔力が宿ってる。多分アルマの言う通り、これで魔物は住み着くと思う」
「えぇ〜、うっそ〜⁉︎」
……ほう。
やっぱりソニアは魔法使いとしてのセンスがずば抜けているようだ。
本人のやる気次第だが、鍛えればかなりの速度で強くなることが出来るだろうな。
「それで結果はいつ分かるんだ?」
ラウルが言った。
「魔物は基本的に夜行性だからな。こんなところまでやってくるとなると、夜になるだろう。だから早ければ明日の朝には結果が分かると思う」
結果は早く分かる方がいい。
明日の朝に結果が出るようにもう一工夫しておくとしよう。
……そして、夜が明けた。
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