第13話 ずるい
「それじゃあ──【鑑定】っと」
俺はラウルに【鑑定】を使った。
[ 名 前 ] ラウル
[ レベル ] 21
[ 魔 力 ] 250
[ 攻撃力 ] 350
[ 防御力 ] 150
[ 持久力 ] 150
[ 俊敏力 ] 300
レベルは21か。
15歳になって《疾風の剣士》のギフトを貰ってから冒険者になったと考えると、結構早いペースでレベルは上がっているのかもしれない。
ギフト《疾風の剣士》の恩恵で魔力、攻撃力、俊敏力の上昇値は中々だな。
俺は口頭でラウルに能力値を一つずつ伝えていった。
「──って、感じだな」
「おお……初めて鑑定してもらったけどよ、正直数値だけ言われてもよく分からないな」
「それなら私と比較してみるといい」
ソニアが言った。
どこかソワソワとしている様子。
もしかするとソニアは早く鑑定してもらいたいのかもしれない。
「……結局そうなっちゃいますよね~」
「ラウル、まぁこうなるのも仕方ないさ。それにラウルの方が能力値が高い可能性だってまだあるよ」
「そ、そうだよな!」
ということで、ソニアにも【鑑定】を詠唱してみる。
[ 名 前 ] ソニア
[ レベル ] 15
[ 魔 力 ] 600
[ 攻撃力 ] 150
[ 防御力 ] 100
[ 持久力 ] 70
[ 俊敏力 ] 100
おおー、流石は《賢者》のギフトだ。
魔力の値がずば抜けている。
「魔力たかっ!」
「でもそれ以外はラウルよりも低い」
「全部俺に勝とうとするな。悲しくなるだろ」
「悲しくなろう」
「嫌だよ⁉︎」
予想通り、鑑定結果を教えると結構盛り上がるな。
「しかし、ソニアは最近ギフトを貰ったばかりなんだろう? それにしてはレベルが高くないか?」
ソニアのステータスを見て、気になったことを言った。
たしかソニアはギフトを最近貰った、と言っていたはず。
それなのに何故レベル15……?
「商業都市までの道中、適当に魔物を倒してた」
「……普通、それだけで15レベルになるか?」
「もしかしたらちょっと強い魔物も倒していたのかもしれない」
「アバウトだな……」
「魔法の練習相手だと思ってたから仕方ない」
「ふむふむ、なるほど」
なんとなく共感できる。
そういえば俺も前世では魔物を倒すことに集中しているとき、いちいち倒した魔物を覚えてはいなかったな。
「……どうやら俺には何も共感出来そうに無いぜ。てかさ、ソニアのレベルを聞いて一つ思ったんだけど、こんなに魔物に遭遇しないのっておかしくね?」
「あー確かにな。これだけ遭遇しないものなのか、御者さんに聞いてみるか」
「いいな、それ」
ラウルの疑問を解消するべく、俺は前で手綱を握っている御者に声をかけた。
「あのー、商業都市を出てから今まで一度も魔物に遭遇していないと思うんですけど、普段からこんな感じなんですか?」
「いや〜、これだけ遭遇しないのは珍しいな。今までで初かもしれん」
「えっ、そうなんですか!」
「そうだなぁ。この仕事をして20年ぐらいになるけど、こんなに遭遇しないのは一度もない気がするなぁ」
「へぇ〜、どうしてなんですかね?」
「正直何も分からないなぁ。特にこれといった異変がある訳でもないからなぁ。ま、魔物と遭遇しない方がこっちとしてはありがたいね」
「そうですよね。ありがとうございます!」
「おうおう。また宿場町に着いたら一杯やろうや」
「はい、是非!」
ラウルとソニアのもとへ戻る。
「やっぱりこんなことは滅多にないみたいだな」
「不思議な事もあるもんだなー」
「私もそこそこ魔物に遭遇していた」
「……もしかして何か嫌なことが起きる予兆だったりしてな」
「え、縁起でもないこと言うなよ……」
ラウルは少し怯えた様子で言った。
「はははっ、大丈夫だって。そのうち魔物にも遭遇するさ」
「……だと良いけどな……って、良くねえか」
まぁ普通は魔物に遭遇しない方が安全だよな。
***
そして、そのまま魔物と遭遇する事はなく、関所に辿り着いた。
ラウルは「絶対に何か嫌なことが起きる!」とネガティブになっていた。
結構ラウルは怖がりなのかもしれない。
関所では入国の為の軽い検査を受けた。
関所を抜けると、先には小さな町があった。
この町にも停留所があり、俺たちは再び乗合馬車に乗った。
しかし、ソニアの領地まで乗合馬車は行かないようで近くの都市で降りて、そこからは徒歩で向かう。
また2日乗合馬車に乗り、その都市まで到着した。
ここからソニアの領地までは徒歩で約2日かかる。
だから俺たちは都市で2日分の食糧と水を購入した。
ちなみに食糧と水は【アイテムボックス】の中に入れている。
「ずるい。私は領地から出てくるとき、大きなリュックを背負ってたのに」
【アイテムボックス】に食糧と水を入れたとき、珍しくソニアはむすーっとした顔をしていた。
「はははっ、良いじゃねーか。アルマのおかげで帰りは楽出来るんだぜ」
「それはそうだけど、ずるい。私も【アイテムボックス】使いたい」
「ん? ソニアは《賢者》のギフトを持っているんだから【アイテムボックス】ぐらい取得出来るだろ」
「……そんなの分からない」
「じゃあ領地に着いたら、俺が教えてあげるよ。たぶんソニアならすぐに取得出来ると思うし」
「……ほんと?」
「ああ、もちろん」
「……ありがとう、嬉しい」
ソニアは珍しく笑顔を浮かべた。
……俺の【アイテムボックス】よりもソニアの笑顔の方がずるくないか?
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