まぶたに浮かび上がる鮮やかな舞台で繰り広げられる、厳しくも優しい世界

"紅蓮の魔女"が、世界を燃やしてから1000年後。
灰に覆われた荒野が、活気を取り戻してきたころ。

――この物語の舞台は、そんな世界にあります。


炎に焼かれ、灰になってしまった世の中なので、「樹」が平和の象徴なのだと思います。
そのため、都は「樹都ユグリア」で、国を守る騎士は「聖樹士」です。
言葉の使われ方ひとつひとつから、この世界の風景が鮮やかに広がっていきます。

主人公は、炎の異能を持つ少女、アーシャ。
"紅蓮の魔女"と関係があるのか否かは、謎に包まれています。
自分の力はなんのためかと自問しながら、彼女が強く生きていく物語です。

孤児院育ちの彼女は、規定の年齢がきて、ひとり立ちします。
その先で、出会う人々、出会う事件。
シビアな局面もあります。それでも、人の優しさが根底にあるのを感じます。

個人的に好きなのは、アーシャが出会う人物のひとり、ニド。
彼の辛い過去、深い想いが描かれたエピソードは読んでいて震えが止まりませんでした。

また、体術の活かされた戦闘シーンも、見どころのひとつです。
炎を扱うアーシャですが、異能の力押しではなく、師匠譲りの旋回の動きと組み合わせて、それはそれは見事な技を繰り出します。
他にも、例えば先述のニドなら、体格を活かした技を。アーシャと同じ人物を師匠に持つ幼馴染のダニーなら、アーシャと同じ旋回の技でありながらも男らしい力強さを見せつけてくれます。

たくさんの魅力にあふれた、この物語。
毎回、毎回、更新を楽しみにしている作品です。

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