良い意味で『よく世に出せたな』と思える意欲作

まず序盤は『アリさん公道横断レース実況』を始めとする先輩の不思議ちゃんとも小悪魔的とも取れない奇妙な魅力に引き込まれる。

しかし彼女は精神障害を患い、他人との距離を縮められないでいた。自分でもその殻を打ち破るべく好意を抱きはじめた主人公に迫るも、ギリギリの所でそれも叶わない。
きっと主人公に明るく絡んでいた行為も、先輩にとっては息を止めて水底にある『普通の暮らし』というアイテムを取りに行く試練だったのだろう。

やがてそれらがどうにも叶わないと悟った時の、彼女の絶望は計り知れない……。

作者自身の心の叫びも聞こえてくるようで、読んでいて辛くなる部分もある。だが本当に求められている事は、その辛さを理解し、寄り添い、共に歩んでいく事だと思う。

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