第1戦 お部屋でデート


「キツイ……」


「やっぱりちょっち小さい?」


「いや、サイズじゃなくて、二十歳でこの格好がキツイ……」


「そうかなあ? 学ラン似合ってるよ?」


「ちなみにお前のそのセーラー姿も若干キツイ」


「えーーー?」


「下手なAV物って感じだな」


「エーブイとか言うなし!」

 学ランとセーラーという、ベタなAV物様な姿でお互い部屋から出て廊下で感想を言い合う。


「惚れさせるんじゃないの? もっと褒めろ!」


「いや、可愛い可愛い、まるで中坊の様だ」


「だれが中坊よ! そもそもどこ見て言ってるのよ!?」

 妹は両手で胸を隠す。まあ、中学の頃から殆ど変わって無いからなあ妹は……胸は大きく無いが、手足は長く身長もそれなりに高いモデル体型、既に中学の時からこの体型では……そりゃ友達も隣を歩くの嫌だろうなあ。


「とりあえず……最初は……俺の部屋にするか」

 さすがにこの格好で公園とか近所の人に見られたらヤバい、って事で、とりあえずどちらかの部屋でイチャイチャしてみようとなり、今回は俺の部屋にしてみた。


「うん、お兄ちゃんの部屋に入るの久し…………うーーわ」


「な、なんだよ!」


「いや、何? このキモイパソコン……引く」


「俺の作ったゲーミングマシンにケチつける気か!」

 部屋のど真ん中で青白く輝いている俺のゲーミングマシン! ハイスペックを追及した俺のお宝だ。


「ゲーミングって、たっくんゲームとかそんなにしてたっけ?」


「ゲーム? してないよ」


「……じゃあこれの意味は?」


「ああ、これはスピード重視っていうか、ベンチマークテストを追及する為だけのマシンとして組んだんだ、どうだ? 凄いだろ!!」

 ベンチマークソフトとしては、いくつかのゲームは入っているけど、実際プレイはしない! 速さの計測のみに浸かっている俺のマシーン!


「ベンチ……へーー……暗……」


「なんでだよ! グラボ3枚刺にして、全国クラスなんだぞ!」


「全国とか知らないし……はあ……あのさあ、たっくん、私に惚れさせる気あるの?」


「なんでだよ! かっこいいだろ!」


「いえ全然……まさかお兄ちゃん元かのにもそんな話ばっかりしてたとか?」


「ぎ、ぎくうう!」


「ぎくうう! とか口で言っちゃうのもなんかオタク臭いし、こりゃ私の楽勝かもねえ、とりあえず……ほらお兄ちゃんじゃなかった、たっくん、こっち来て座って」

 妹は俺のゲーミングマシンを跨ぐようにして素通りして、壁際のベットに座ると隣をポンポンと叩き俺を誘う。

 とりあえず、今、妹は彼女だ……と俺はそう心に念じて隣に座ると、妹は俺の手の上に自分の手をそっと乗せた。


「ええええ!」


「な、なによ!」


「いや……な、なんでもないれす……」

 照れもせずにこういう事を、しかも実の兄にやってのける妹に、その行動力に俺は驚いてしまう。


「すううう……私ね……たっくんの事……ずっと好きだった……だから……嬉しい」

 妹は深呼吸をしてから、目をウルウルとさせ俺を見上げる。えええ? な、なに? いや、違うこれは演技なんだ、戦いなんだ! 今、俺は妹と戦闘中だった事を思い出す。


「お、俺も……だよ」

 俺はそう言って妹の髪をゆっくりと撫でた……すると妹は俺の肩に頭を乗せる。


 うーーわ、うーーわ、なんだ? こいつ、強敵か? 上手すぎるぞ?

 

 でも俺だってと、そのまま自分の頭を肩に乗せている妹の頭に軽く乗せる。

 妹の髪の匂い、ひんやりとした髪の感触が俺の手に伝わる。

 

 ドキドキする……ヤバいドキドキしてくる。相手は妹なのに……。

 しかしそんな俺に構う事なく、妹はさらに攻撃を仕掛ける。

 

 俺の手を指を自分の指に絡めてきた。

 恋人繋ぎ……夢の恋人繋ぎを妹と……いや、今は妹ではないんだ、俺の恋人なんだ。

 

 そして俺はさらに思い出す。


 ここは俺の部屋、ベットの上……。

 俺は妹を、いや、恋をじっと見つめる。や、やばい……このまま……。

 見つめ合う妹の顔にゆっくりと自分の顔を近づける。


「お兄ちゃん……」

 妹からそう呼ばれ俺は我に返った。


「いやいや、ちょっと待て! お前本気か? 俺の勝ちだろ! 今キスしようとしただろ?!」


「は? 本気じゃないし! お兄ちゃんこそ今キスしようとしてなかった?」

 

「しねえし、全然する気にならねえし!」


「どうですかねえ? かなり本気の顔したたけど?」


「いやいや、お前こそ最後にお兄ちゃんって言っただろ?」


「言ってないし!」


「言ったって、数行前見て見ろ!」


「意味わかんなし! もういい! 今日は終わり!」


「はいはい、そうやって誤魔化すんですね!」


「ふん!」

 妹はベットから立ち上がると足早に部屋から出ていく。

 ……俺は妹を見送った後ベットに倒れこみ両手で顔を押さえた。


「……危なかった」

 第一戦であっさり敗北する所だった……。


 これは今後気を引き締めて行かななければ……。

 危険な戦いはまだ続く。




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