妹と疑似恋愛してみよう。勝つのはどっちだ? 惚れさせたら勝ちの恋愛ゲームが始まった。

新名天生

恋愛ゲーム


 大学2年の夏休み、どこにも行く所が無い俺は、いつものように冷房の良く効く自宅にリビングにて漫画を読んでいた。

 読んでいた漫画はラブコメ……夏休みこんな所で寝転んでいても、一応恋愛には興味はある。

 

 でも……なぜだか俺はモテない……。

 なぜだろう? 顔それなりに良いし、身長もそこそこだし……俺はずっと悩んでいた。


 高校1年の春、俺は恋に落ちる。

 俺の少し遅めの初恋相手は、黒髪ロング、見るからにお嬢様風な風貌、俺は一も二もなく彼女に恋をした。

 当時何も知らない怖い物知らずの俺は、思い立ったらすぐに実行するべく彼女に告白、そして見事成功、彼女はそんな俺を受け入れてくれた。


 しかし、それまで俺は女子と付き合った事がなかった。

 

 彼女は中学迄はそれなりに付き合っていたそうだ。

 だから俺は頑張った……いや、頑張ろうと努力した。


 でも、……それが逆に空回りしてしまった。


 「巧君って……思ってたよりつまんないね」

 それが……最後の言葉となった。


 それ以来、俺は恋に臆病になってしまう。

 

 そしてあっという間に数年が経ち俺は遂に20才の誕生日を迎えてしまう……そう俺は彼女が居ないまま……出来ないまま、大人になってしまった……。


 今は夏真っ盛り……テレビからはプールや海の映像が流れている。

 それでも家に閉じ籠りっきり。

 波多野 巧はたの たくみ 現在某有名大学に通う20才

 スペック的には悪くない筈な俺は、いまだに彼女なし、経験数は……勿論0。


「はあ……」


「──ああ、もう暗い暗い暗い!」


「あ?」


「お兄ちゃん! ため息つきながら漫画読むの止めてくんない?」


「嫌なら部屋に戻ってろよ」


「やだよ、暑いんだもん!」


「じゃあプールでもどこでも行けばいいだろ?」


「は? 一人で行けと?」


「友達とでも、彼氏とでも行けばいいじゃねえか?」


「……く……」

 俺がそう言うと苦悶の表情を浮かべる妹……お前まさか……。


「……お前……まさか……彼氏どころか……友達もいねえのか?」


「……い、いなくて悪いか! お兄ちゃんだっていないじゃん!」


 俺の向かいでソファーに寝転んでいた妹は、俺に向かって枕にしていたクッションを投げつけて来る。

 妹よ……お前もか……。


波多野 恋はたの れん17才高校2年、俺の実妹、彼氏はいないらしい……。


 友達も彼氏もいない俺と妹……ううう、寂しいぞ、寂しすぎるぞ……この兄妹。

 触れてはいけない二人の闇……俺と妹は暫く黙ったままでいた。

 すると気を取り直した妹は、唐突に自分の考えを訥々と話し出す。

 

「……ねえ、お兄ちゃん……私さあ……思ったんだけど……やっぱさ、私達スペックの割に経験が無いから、理想と現実がかけ離れてるってのかな? って、なんか……がっかりされちゃってると思うんだよね」


「──自分でスペック高いとか言っちゃうその性格のせいだと思うんだが?」


「だって私可愛いもん!」

 黒髪の美少女、艶々とした流れる様な黒髪、フランス人形かと思わせる綺麗な顔立ち、モデル顔負けのスタイル、妹と一緒に居れば当然比べられ、誰もが自己嫌悪に陥ってしまうだろう。オソラクそれが友達居ない原因……。

 妹は、孤高の美少女……中央線の奇跡、そう呼ばれている程に可愛い。


 実の兄である俺から見ても、可愛いと思える妹。そして俺の元彼女は少しだけ妹に似ていた。


「ハイハイ、それで?」

 だが素直に妹を可愛いと認めるわけにはいかない、だって俺は……兄なのだから。

 俺はシスコンじゃない、俺はシスコンじゃないと心で念じながら、気のない感じでそう言う。


「やっぱりね、経験が必要だと思うんだよね、私の回りでもやっぱり経験者はモテるんだよね」


「そ、そうなのか?」

 やっぱりそうなのか? 童貞じゃ駄目なんですか?


「うん、特に男子は、彼女いる人は圧倒的に人気があるよねえ」


「そうなのか! でも……確かに……俺の周囲のモテる奴って、結構浮気してるよなあ」


「まあ、浮気は駄目だけど、魅力ある人に集中しちゃうってのは世の常だよねえ」


「くっそ……日本はハーレム禁止じゃないのか!」


「まあ、禁止では無いよねえ、重婚は出来ないだけで」


「……それで、結局俺を谷底に落として『のれん』は何が言いたい?」

 はたのれんで『のれん』俺が時々使う妹の別称だ。


「のれん言うなし! やっぱり私達の足りない物って経験だと思うの!」


「……まあ、そうかも知れない」

 確かに……初めて彼女が出来た時、デートの仕方、会話、基本的な事が何もわからなかった。

 とりあえず何を話して良いのか? どうやって関係を進めて良いのか? どこにいけば良いのか? 俺は……当時、何もできなかった。


「お兄ちゃんも、かなりのスペックだと思うんだよねえ、顔はそれなりに良いし、身長も学歴も、なのにそうやってソファーで寝転んで読んでる恋愛小説程度しか知識が無いじゃない? 相手が、がっかりしちゃうんだよね、多分」


「そ、それは……そうかも……」


「私もさあ、誰彼構わないなら、いくらでも経験積めるんだけど、この容姿でとっかえひっかえなんてしてたら、やっぱ女の子としてまずいんだよね、ビッチ認定不可避みたいな?」


「とっかえひっかえじゃなくて、一人に集中すれば良いのでは?」


「うるさい! とにかくいない物はいないの!」


「……で、結局何が言いたいんだ?」


「だーーかーーらーー、お互い経験を積んでもいい相手がいるでしょ? 別れる事はない、相手の事をよく知っている、そして一緒にいてもおかしくない相手が」


「…………誰?」

 俺は一体妹が、誰と誰の事を言っているのか、見当もつかなかった……。

 うーーんと考え困った顔で妹を見ると、妹は笑顔で指を一本立て、自分と俺を順番に指差す。


「…………は?」


「私とお兄ちゃんなら一緒にいても兄妹なんだからおかしくないし、お互いの事よく知ってるし、経験積むにはちょうどいい相手なんじゃない?」

 妹はどうだと言わんばかりに胸を張る。いや、ちょっと待て、何を言ってる! 経験? は?


「経験って……お前……まさか……俺と……その……エッチな事を……」


「──え? …………ば、バカ! 何考えているのよ! エッチ、変態!」


「いや、だって経験って」


「兄妹でそこまでするわけ無いでしょ! ち、違うから、そう言うんじゃないから!」


「じゃ、じゃあどういうんだよ?」


「だーーかーーらーー、デートよ、デート! 恋人の振りをしてお互い何が良かったか、何が悪かったか言い合えれば経験値が上がるでしょ?!」


「いや、なんかそれって……情けないというか」


「夏休みでこんな所でゴロゴロしている方が情けないよ! このままじゃあ、私もお兄ちゃんも結婚どころか一生童貞と処女のままだよ!」


「いや、まさか……でも」

 俺も既に20才……このままだと魔法使い一直線に……。


「色んな場所に二人で行けば、それだけで、それなりに経験値になると思うんだよねえ」

 それは結局俺にどこかへ連れて行けと……最初からそう言えば良いものを……でも確かに妹の言っている事は一理ある。


 エスコート力とでも言うのだろうか? 知らない場所だと俺は常に右往左往してしまう。


「…………わかった……」


「ほ、本当に!?」


「……ああ」


「じゃあじゃあ、とりあえず今から始めよう!」


「今からって、いいけど? 何をするんだ?」


「やっぱり、基本の基からじゃない?」


「基本? 基本てなんだ? 恋愛の基本?」


「お兄ちゃん勉強でわからなくなったらどうする?」


「いや、勉強でわからなくなった事が無いからわからん」


「……そう言う自慢は良いから……一般論としてだよ!」


「……うーーん、まあ、この場合基礎からやるって言うのが正解なんだろうな」

 今基本の基からって言ったばかりだし……。


「そう! やっぱりね、中学生からやり直すのがこういう場合良いと思うんだよねえ、って事でお兄ちゃん中学の時の制服着て来て、ちょっち公園まで行ってベンチかブランコにでも座ってイチャイチャしながら、語り合おう!」


「──アホか! で、出来るか!」


「えーー、お兄ちゃん中学から体型そんなに変わって無いでしょ? 私だって今さらセーラー着るんだよ?!」


「な、何でそんなアホな事を……」


「形から入るのってのも結構大事な事でしょ? 憧れてたんだよねえ、公園とかで彼氏とイチャイチャするの」


「い、いや……俺もそうだけど……、お前は良いさ、まだ学生なんだから」


「お兄ちゃんだって学生じゃない!」


「俺は学士様だ!」


「ハイハイ、でも映画とか学生料金でしょ?」


「いやそうだけど、とにかく着れない! 嫌だよそんなアブノーマルな事」

 こいつは一体俺に何をやらせる気なんだ? 


「もう……たっくん、私達今から恋人同士なんだよ? そんな言い方だと減点だよねえ~~」


「た、たた、たっくん!?」

 怪しい笑顔で俺をそう呼ぶ妹……。


「やるって言ったよね? あの言葉は口だけなの?」

 妹は俺を見て嘲笑う……畜生、ちょっとばかり可愛いと思いやがって……。

 妹がモテない原因の一端を垣間見た気がした。

 でも言った事は事実だ。今更やめるなんて言ったら妹に一生言われる。


「──く……やる」


「だよねえ、それでこそお兄ちゃん! おっと、たっくんだよね」

 何か妹にしてやられている感が、だが、やるからには何でも真剣にやる。趣味でも遊びでも勉強でも、それが俺の信条だ。

 そこで俺は妹に提案する。


「やるからには、お互い真剣にやらないと、そこで提案なんだが、仮想の恋人としてこれから付き合うって事にしたわけだけど、やっぱり期限は設けないとって思うんだ」


「おお、お兄ちゃんがやる気に!」


「そこで、夏休み、この夏休みまで、お互い恋人同士って事にするのはどうだろうか?」


「うーーん、まあ、いつまでもってわけにはいかないよねえ、確かに……」


「あと、お互い一応兄妹なんだから、あるライン越えちゃいけないとは思うんだ」


「うーーわ、まだそんな事考えてるお兄ちゃんに引く」


「いやいや、何事もルールって必要じゃないか?」


「うん、まあ、それで?」


「例えば好きになったら負けとかだとすれば曖昧過ぎるじゃない? 結局家族として好きなのか? 恋人として好きなのかってどこまで行っても曖昧になるし」


「ふむ……」


「そこでだ、もしどちらかがその一線越えそうになったら、つまり俺か恋のどちらかが本気になってその一線を越えそうになったら負けって事でどうかな?」


「どうかなって……お兄ちゃん結構恐ろしい事言ってない?」


「いや、やるからにはとことんやる、それが俺の信条だからな!」


「──お兄ちゃん……そうだね、これは私達の今後を、この先将来を左右する事になるって事だもんね」


「相手を惚れさせるゲーム、期間は夏休み中」


「受けて立つよお兄ちゃん!」


「お前を俺に惚れさせて俺にこの話を持ちかけた事を後悔させてやる!」

 俺と妹はがっしりと握手した。

 妹との不毛な戦いが始まる。



発作的に書いてしまった(;ω;)

兄妹物書かないと病気になるの……( ;゜皿゜)ノシ許して




【あとがき】

発作的に書いてしまった(;ω;)

兄妹物書かないと病気になるの……( ;゜皿゜)ノシ許して


ちなみに勝負と言ってますが、勝ち負けというよりは、妹と一緒に旅行等に行くという、日常ほのぼの小説の予定です。

不定期更新(*゜ー゜)ゞ⌒☆


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