伊豆旅行その3
箱根を出ると俺はさっき調べた伊豆スカイラインと言う有料道路に向かった。
富士山を一望できる展望台等が複数あり、妹と一緒に途中途中で雲からわずかに顔を出す富士山を眺めつつ、今日泊まるホテルに向かった。
「見て見てお兄ちゃん丸坊主の山」
「大室山って書いてあるな」
途中木が一本も生えていない山が見える。
カーナビの大室山という文字を読みつつ、ぐるりと迂回。
そのまま暫く走ると、程なく本日泊まるホテルに到着した。
「おお? なんかいい感じの入り口だなあ」
「設備も、なにか色々あるらしいよ~~」
「へーー」
エスニック風の建物、もともとはどこかの会社の保養所を改築したようなホテル。
「お兄ちゃん見て猫!」
「こんな所に? ホテルで飼ってるのかな?」
猫を撫でている妹を横目に、車から荷物を取り出しそのまま中に入ると、なにやらお香の香り。
フロントで予約している事を伝えると、一通りの説明を受け鍵を受け取り部屋に向かった。
「へーー漫画とかあるんだ?」
部屋に行く途中、かなりの量の漫画が廊下の本棚に並んでいた。
「そうそう、お兄ちゃん漫画好きだから」
「でも、読んでる暇あるか?」
さっきの説明で、色々と遊ぶ予定を入れさせられた。
まあ、断る事も出来るんだけど、一通り……そしてその中でも……。
そんな事を考えながら部屋の前に到着。
そして扉を開け中に入ると……。
「わ~~~凄い、お兄ちゃんほらほら見て! 天蓋ベット、一度寝て見たかったんだよねえ~~」
そう言いながらベットに飛び込む妹……天蓋ベット……天井からカーテンが広がりベットに掛かっているいわゆる屋根付きベット、映画等で大金持ちのお嬢様が寝ている様なベット……なのは良いんだけど。
「あ、あの……俺はどこで寝れば?」
「ん? 隣でいいじゃん」
妹はそう言って枕を抱きしめながら、ベットの半分を開けた。
「……マジで?」
そう……この部屋のベットはダブルベットなのだった。
「えーー懐かしいじゃない、別に私は気にしないよ~~、お兄ちゃんが嫌ならソファーで寝れば?」
もうここから動かないとばかりに妹は仰向けになり、枕を抱いて目を瞑る。
くっそ……そっちがその気なら……。
手を出した方が負け……そして相手は妹だ、一緒に寝たところで、手なんか出すわけない……。
俺は覚悟を決めた。そう、これは将来彼女が出来た時の練習、
いつかの為に、こういう事も慣れておかなければ。
俺は荷物を部屋の端に置き、そのまま妹の横に寝転んだ。
うん、大丈夫だ、なんて事はない……今の所は……。
「……そう言えば、なんか色々ゲームとかあるって言ってたよね?」
「卓球とか、パターゴルフとか、テレビゲームとか、なんか色々とあるってさ」
「へーー、とりあえず一通りやりに行こう!」
そう言って起き上がる妹、そう……このホテルは色んな遊び道具がある。
他にもカラオケや食事の際全て飲み放題、夜食、そして……家族風呂。
とりあえず一通り予約をしている。
家族風呂も……って本当に入るのか?
一応、大浴場もあるけど……。
さすがにいいのか? 妹の真意は?
そう思いながらホテルの施設で遊ぶが、時間が経つに連れ俺の緊張は少しづつ増していく。
とりあえず一通り遊び、部屋で漫画を読む事に……。
そして早めの夕食、夜中に夜食も出るとの事なので、早めの時間予約を入れた。
「お兄ちゃん、お酒飲まないの?」
「あ、ああ、じゃあ少しだけ」
食事の時間はなんでも飲み放題との事で、俺はそう言ってビールを頼んだ。
ただ一応飲める年なんだけど、友達もいない、サークルにも属してない俺、そんなにお酒が旨いとは思わないが、勿体ないからと、貧乏性なだけでビールを飲んだ。
「あ、なんか旨い……かも?」
旅の高揚感なのか? 初めてお酒が美味しいと感じる。
「いいなあ……」
妹はノンアルコールカクテルを飲みながら羨ましそうに俺を見る。
「あと3年先だなあ」
「長いなあ、お兄ちゃん一口!」
「だめえ~~」
「ケチ!」
次々と運ばれてくる料理、飲み放題のお酒、次第に酔いが回って来る。
エスニック風のホテルだが、運ばれてくる料理は多国籍料理。
トムヤムクンとか苦手な俺は、安心して箸が進む。
「やばてん…ちょっと酔ってきた……かも」
「えーーカラオケ行くんだよ~~、あとまだお風呂入って無いし」
「いや、カラオケは良いけど、風呂は……入るのか?」
「え? 入るでしょ?」
「いや、その……家族風呂にも?」
そう言うと妹はニヤリと笑った。
「入りたい? 一緒に……」
妹はニコニコしながら、そう言って俺に判断を委ねてくる。
汚い、汚いぞ! いつもそうだ自分から言い出して最終判断は俺に委ねる。
子供の頃からそうだった。妹はそれでいつも勝った気になっていた。
だから今回も……そうか、俺は妹に舐められているのか?
酔いが回って俺も強気になって来る。負けない、今度こそ負けない!
「別に、のれん、の裸なんてなんとも思わないから俺は一向に構わないぞ!」
「のれん言うなし! って、お兄ちゃん本気?」
「ああ、本気も本気! 全然本気! なんとも思わないね!」
「うーーわ、酔っ払いだ……よし! わかった入ろう!」
負けず嫌いの妹に火が付いたのか? デザートを素早く平らげた妹はそう言って席を立った。
「おお! 風呂だ風呂、温泉だ~~!」
もう、なんか身体も頭もふわふわしていて、自分が何を言ってるのか、よくわかっていない。
とりあえず……部屋に戻って風呂の準備をすると、準備を終えた妹は俺の手を握る。
「行くよ! お兄ちゃん!」
そう言って館内地図を片手に、俺たちは家族風呂に向かった。
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