伊豆旅行その5

湯煙が立ちこめる中、俺は妹と一緒に外を眺めていた。

 ライトアップされた、椰子の木や南国情緒溢れる草花が窓から見えている。


 まるで……東南アジアに旅行している様な気分になる。


 隣には妹……いや、もとい、今は俺の恋人がいる。裸で……隣に寄り添ってくれている。

 腕と腕が触れあう、素肌が触れあう。 頭を乗せた肩から妹の香りが俺の鼻腔をくすぐる。

 良い香り……そういえば車の中も良い香りだった。

 一緒にいると気付かない、妹の香が今は凄く感じ取れる。


 俺は窓の外から視線を外し、チラリと妹を見た。お湯の中でゆらゆらと妹の裸体が揺れている。

 見るからにスタイルの良さそうな整った妹の裸……。

 じっと見るわけにもいかず、俺は外を見ている振りをして時々目線を妹の身体に……いや、ほらさっきお尻見られたから……少しは見返しても良いかな? 仕返しだから少しくらいはっていう意味で他意はない。

 

 お湯に浸かりながら二人でボーッと外を眺めている……俺はチラチラ妹も……。

 何もしていない、ただ二人でお風呂に入っている、それだけなのに、ただそれだけなのに、ひたすら楽しい……。


「そろそろ……カラオケの時間だよね」

 俺の方から頭を外し、俺を見上げてそう言う。


「あ、うん」

 妹の頭の重みが肩から無くなり、少しだけ残念な気持ちになる。


「行く?」

 そう言われ……俺はもう少しこのままでいたいと、そう言おうとした。

 でも、お酒を飲んでから入っているので、また酔いが回り始めていた、目が回り始めていた。

 そもそも、妹の裸をもっと見たいと言っている様なものだ……さすがにそれは……。


「そうだな……折角だから出るか」


「うん、身体洗って無いけど、カラオケで汗かくかもだし、大浴場で入り直せば良いか~~」

 汗かく程に歌う気か? そう考えていたその瞬間、妹は俺の隙を突く様に横に置いてあったバスタオルを素早く身体に纏った。


「……あ!」

 

「ん? 何?」


「あ、いや、何でも……」

 さっき俺のお尻を見た仕返しに風呂から上がる時に、せめて妹の尻でもバッチリ見てやろうと思っていたのに、ち、畜生……。


「何? 何? あ、そうか、お兄ちゃん、私の裸見たかった?」

 妹はなにか俺から読み取った様に、ニコニコしながら俺を見てそう言うと、バスタオルの結び目の手をかけた。

 こんな時ばかり兄妹だと思わされる。 なぜわかるんだ! かといって、ハイそうですとは言えない……。

「ば! そんなわけ!」


「え~~~良いの? 良いの? 見たくないの? 見せてあげよっか? チャンスだぞ!?」


「い、妹の裸なんて……別に興味ねえし」


「本当に? い、い、の、か、な?」

 そう言って満面の笑みを浮かべつつ、バスタオルの結び目をクイクイと引っ張る。 見たい……あくまでも仕返しという意味で見たい……かも……。


「べ、別に……キモいだけだし」

 あああ、俺は何を言ってる……キモくなんてこれっぽっちも……。


「へーーそう、残念、じゃあお先に~~」

 

「あ、ああ……」

 うわああああああああああああ……。

 いや、あくまでも仕返しだから、本当に興味無いから……あ、でもそうだ! 今すぐ追いかけていけば妹の着替えをって、それこそ変態か! それこそ興味あんじゃんって妹に言われるだけ……。


「あふううう……」

 ショックで……目の前がグルグルと、いや、違う風呂のせいで酔いが……、

 上がるに上がれない状況に、精神的ショックで、さらに酔いが回り出す。


 俺は頃合いを見て、壁に手を付きながらくらくらする身体を支え慎重に脱衣室に行くと。

 すでに妹はそこにはいなかった。


「はあ……」

 俺は素早く着替え、部屋に戻ると妹は既にカラオケに行く準備を済ませている。


「お兄ちゃんじゃなかった、たっくん早く!」


「はいはい……」

 俺もタオル等を部屋に置き妹を二人でカラオケルームに行く。

 カラオケで妹は歌いまくり、俺はさっきの事を忘れるべくさらに飲みまくる。

 

 カラオケを終えると夜食コーナーに……

 夜食のラーメンを食べながら俺はとどめに日本酒をあおったところで……意識が朦朧としてくる。


「ああ、もう、たっくん飲みすぎ」


「ら、らって……楽しくてへえ」

 悔しくもあったが、概ね楽しい……旅行……。


「ほらお部屋戻るよ」


「ふええ、まだのみゅううう」


「だ~~め!」

 そう言われ妹に支えられながら部屋に戻る。

 そして、部屋に入ると妹は俺を支えながらベットに寝かす……その時俺は……思わず妹に抱き付いた。


「ちょ! お兄ちゃん?!」

 酔いのせい? さっき裸を見れなかったせい? それとも……。

 なんでか俺は突然妹を抱きしめたくなった……。

 なぜだか……。

 

 …………。


 そして……俺の記憶はここまでだった……。



 朝起きると……激しい頭痛が、頑張って目を開け辺りを見回すと……妹は……既に起きていてベットの脇で黙って俺を見つめていた。


「ん? あれ? えっと……おはよ、あたたた」


「……おはよ……」


「えっと……あれ? 俺どうしたんだっけ?」


「……覚えてないの?」


「いや、えっと……夜食の所までは……」


「そか……」

 なにか、妹は寂しそうな顔になる。


「どうした? え? 俺なんか……した?」


「……ううん、何も……覚えてないんじゃ、なにもしてないのと一緒だよ……お兄ちゃん朝ごはん食べられる?」


「あ、うん……」


「私……先に行ってるね、お兄ちゃん準備出来たら来てね」

 そう言うと妹はベットの脇にあった椅子から立ち上がると部屋から出ていく……・


 え? 何? 何があった? どうしたんだ? え? あれ? おーーい……。


 俺……なんかした?

 そこで思い出す……最後の最後、このベットに寝かされた時……妹に抱き付いた事を……。


「ま、まさか……」

 まさか俺は……。




 

【あとがき】

 ここでとりあえず一区切り(笑)

 外面と他の作品を書かないと

 読む人も少ないしランキングも低いので、この後はゆっくり更新していきまする。

 

 ちなみに自分の趣味全開の作品すぎて、書いてて面白すぎる( *´艸`)(笑)

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