「オレオ効果」のせいでカクヨムはラブコメだらけになった?

 さて、カクヨムには他のサイトと違い、作品の文字数が少ないほど★がもらえ、それにより読者が増えやすくなるという異常な仕様「オレオ効果」があるわけだが、それは実は、カクヨムのランキング上位を見ることで簡単に実感することができる。


 カクヨムのランキング上位に入っている作品には「★と話数がともに3桁」という条件を満たしているものが、ほぼないからである。ほんとにないぞ? 1個しかない。


とりあえず総合マンスリー

https://kakuyomu.jp/rankings/all/monthly


 まず話数2桁の比較的文字数の少ない作品ばかりが上位にあるのが目につく。うーんオレオオレオ。


 しかし、そんな中に文字数の多い、話数3桁のものも入っていて、「オレオ効果に負けずがんばってるなー」と一瞬思うが、それはすでに★を4桁まで集めているものばかりである。つまり「文字数が少ない段階ですでに読者を集め終えている」ので、文字数が増えても★がもらえている状態なのだ。


 これはつまり、「オレオ効果」により、★を4桁まで集めないうちに話数を3桁(相当の文字数、三十万字ぐらい?)まで増やしてしまうと、カクヨムではほぼ確実にランキングには上がらない、ということを示している。まあ、なろうから作品を転載(元作品は削除完了)など、なんらかのパワーで読者を集められる人はまた違うんだろうけどね。


ラブコメ週間だと特にその傾向は顕著 書籍化作品の1つしかない

https://kakuyomu.jp/rankings/romance/weekly


 つまり、早い段階で★を4桁集めることしかカクヨムで成り上がる方法はないのである。更新を続けていくうちに後からじわじわ上がってくる作品は他のサイトだとちょくちょくにあるが、カクヨムにはありえない。オレオ効果が文字数の多い中堅作品の成り上がりを拒み、★の入りやすい文字数の少ない作品か、早い段階で★4桁集めたものだけをランキングに残すようになっている。


 そして、このシステムにより、なぜカクヨムでラブコメが異常に人気なのかが見えてきた。

 

 そう、ラブコメは文字数が少なくても★が入りやすいジャンルである。物語開始時点から、美少女が主人公とイチャイチャしていれば、一万字なくても★が入る。じゃんじゃん入る。そういうジャンルである。


 一方、異世界ファンタジーだと一万字程度だとほとんど何も物語が始まっていないので、さすがにその段階では評価しづらい。あらすじに書かれている内容だけを見て、期待を込めて★をくれる人もいるかもしれないが、やはりラブコメに比べると、少ない文字数では★を稼ぎにくいジャンルである。


 そして、オレオ効果により、他の文字数の多い作品に比べて相対的に「文字数の少ないラブコメ」に★が入るので、おのずとそれらばかりがカクヨムユーザーの目にさらされ続けることになる。★が入れば、露出が増える仕組みのサイトだからである。そして、そこから入った読者がまた★を入れて、その作品がまた露出し……。そういう感じに、「文字数の少ないラブコメ」がやたらと露出し続けるサイクルが完成しちゃってるのである。


 つまり、カクヨムではラブコメが人気、ではなくて、オレオ効果により「文字数の少ないラブコメ」が圧倒的に目立ちやすく有利なため、人気のように見えるだけなのだ! って、まあ、それは言い過ぎか。人気はそれなりにあると思いますよ?


 しかし、この「文字数の少ないラブコメ」ばかりが評価されるという仕様は、角川という出版社が直接運営している小説投稿サイトとしては、非常に問題がある気がする。出版社の立場から書籍化する作品を選ぶなら、文字数(ストック)は多いほうがいいに決まっているからである。


 もちろん、ラブコメだろうと、文字数の少ない段階で読者を集めて、そこから文字数を増やしていけば、書籍化の打診が来るのも夢ではないのだろう。しかし、実際は、そこまで文字数を増やせずに終わる(エタる)作者が多いようだ。なぜか。


 理由はやはり――オレオ!


 そう、どんなラブコメも、文字数が少ないうちはじゃんじゃん★が入っていくのだけれども、更新を続けていくうちに、オレオ効果によりその勢いは落ちていく。たとえ★を4桁集めようと、オレオ効果からは逃れられない。勢いが落ちても他の作品に比べてよっぽど読者は多いはずだが、書き手の「なんだか最近伸び悩んでいるなあ?」「もしかして飽きられてる?」というモチベーションの低下にはつながる。そして、そのうち書き手は気づく。このままずっと伸び悩んでいる(と感じている)ラブコメをダラダラ続けるより、新作を書いたほうがいいということに……。


 また、オレオ効果とは別に、今流行っているラブコメ「主人公とヒロインがただイチャイチャしているだけ」の内容では、長く続けるのは難しいのだろうと思う。書き手としても読者としても、飽きてくる。なんせ金太郎飴なんだから。


 なので、カクヨムでは、「文字数の少ないラブコメ」が量産され、★を集めてランキングに上がってはすぐ散る流れが続いている。まるで打ち上げ花火か、流星か。


 もちろん、中には読者をたくさん集めた後、オレオ効果に負けずにずっと更新を続ける書き手もいるが、「注目の作品」に表示されるラブコメの多くはやはり文字数が少なく、文字数の多い作品が育ちにくい土壌をひしひしと感じる。

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【カクヨム最強攻略】どういうタイトルやキャッチコピーだと読者が増えやすいか、実際にカクヨムの「注目の作品」で計測して調べてみた PVやフォロワーの伸ばし方もわかった 真木ハヌイ @magihanui2020

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