人としての感情の揺れが愛しくなる

忘れたくても忘れられない、または忘れられないけど忘れたい。
そんな記憶は誰にでもあるものなのかもしれない。

人が機械として生きる事ができるようになった世界で、記憶はアップデートされ、いらないものは削除される。
永遠の命を得る事で無くすものがあって……

スレジは記憶屋として生きる生身の人間。
永遠の機械の体を持つものは記憶をなくし、生身の人間として生きる彼は記憶を覚えている。

虚しいわけではない、悲しいわけでもない、必要だけど、必要ではないもの。
記憶の重なりで人は成長していくものだけど、時には要らない記憶もある。

踏み出す妨げになる記憶、だけど忘れたくはない記憶、それをどうするのか……




読み終えた後、愛しさが溢れてしまった。
人として生きる、それはとても大事な事だと思うけれど、生身か生身でないかより大事な何かがあるのだと突きつけられた気分だ。

詩一さんの作品にはいつも本当に驚かされる。
これもまた、きっと何度も読むだろう。
大事な時にきっとまた読みたくなる。

この作品は読んだあなたに何かを残す。それだけは間違いない。

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