22(最終話) 正義の味方
「二人ともなんとか無事みたいだな。間に合ってよかった」
告げて、彼は進み出た。
「ふん、恋人が助けに来たのか?」
「なかなか男前じゃねえか」
ごろつきたちが嘲笑する。
「や、やだな、恋人だなんて」
レナは顔が熱くなるのを感じた。
先ほどまでは驚きのあまり頭が真っ白だった。
ごろつきたちの軽口と揶揄が、レナをその状態から解き放つ。
「ラブラブだなんて、むしろイチャラブだなんて、誰がどう見ても恋人同士で、しかも彼の方がデレデレだなんて」
「いや、そこまでは言ってないが」
と、ツッコむごろつきたち。
「先輩、かえってきてくださーい」
ジークリンデもわずかにジト目だ。
「そんな、あたし、別にそんな、彼とはまだそういう関係じゃないし、それはまあ、いずれそうなったら嬉しいな、なんて想像したことはあるけど」
「おーい、帰ってこーい」
「えへへへへへへ、やだなー、うふふふふふふ」
先ほどまで殺されそうになっていたことさえ、頭から消えていた。
自分の危機に現れた、憧れの美少年。
これほど乙女心を燃え立たせるシチュエーションもないだろう。
「……あいかわらず妄想が激しいな、君は」
ミゼルまでジト目でこちらを見ていた。
「かっこつけて助けに来たことを後悔させてやるぜ」
「フリッツの仇だ」
ごろつきたちはいっせいに剣や槍、ボウガンなどそれぞれの得物を構えた。
ミゼルは彼らを冷ややかに見つめる。
片目が一瞬、真紅の輝きを宿した。
「全員の
淡々とした口調で告げる。
「皆殺しだ」
まるで害虫でも駆除するかのような──淡々とした口調で、そう告げる。
手にした槌が、身にまとう黒衣が、虹と銀の混じった輝きを放った。
「み、皆殺しだとぉ! 舐めるな、ガキが──ぐあっ!」
怒声を上げた男が、鉄槌の一撃で吹き飛ばされた。
当然、これも即死だ。
地を蹴り、ミゼルは彼らに向かっていく。
残像が見えるほどの超速で。
「ひ、ひいっ……」
「なんだ、こいつ──」
ミゼルは巨大な槌を軽々と旋回させ、眼前の男の胴部に喰らわせた。
風船が弾けるように、無数の肉片と化す男。
「ゴードン!」
「ば、化け物だぁ……」
「た、助けてくれえ……」
続けざまに殺された仲間たちを見て、残りの者の戦意は失われたようだ。
「助けてくれ? お前たちはそうやって命乞いした人間を助けてきたか?」
ミゼルの問いに、男たちは言葉を詰まらせた。
「見えているぞ。お前たちは自分の欲望や利益のために人を殺すことをいとわない。ゆえに──俺はお前たちを『悪』と認定する」
「ひ、ひいいっ!」
「そして、俺が悪と断じた者は」
慌てて背を向け、駆けだす残りの男たち。
ミゼルは容赦なく追撃の槌を振るった。
「全員殺す。一片の情けもかけずに殺す。容赦なく殺す」
死の宣告とともに、漆黒の槌が振り下ろされ、振り回される。
苦鳴と悲鳴が響き渡った。
またたく間に全員がただの肉塊と化した。
「残るはお前一人だ、女」
「へえ、神器使い──それもクラスSの」
彼女が笑った。
「だけど、あたしにはクラスA神器『操作の魔眼』があるのよ。戦い方次第では、クラスSに──が、ぎゃぁっ!?」
「言ったはずだ。全員、容赦なく殺すと」
いつの間にか彼女の側に移動していたミゼルが、巨大な槌で彼女の頭部を粉砕する。
言葉通りの――容赦のない鉄槌だった。
「ミゼルくん……」
レナは彼を見つめた。
「し、心配したんだよ! あたし、ずっとあなたのこと──」
「先輩、無事だったんですね!」
ジークリンデも潤んだ瞳でミゼルを見ている。
「気遣わせていたのか。悪かったな、二人とも」
ミゼルはレナを、そしてジークリンデを見つめた。
ジークリンデの方も涙目である。
「ミゼルくん、あなた一体……」
レナは息を飲んで、ミゼルを見つめることしかできない。
「今までどうしていたの……? 今、何をしているの……?」
「何を? 決まっているだろう」
彼は無言でレナを見つめた。
「俺は、正義のために戦う。これから先も、何百人でも、何千人でも、何万人でも殺し続ける──」
ゾッとするような冷たい瞳だ。
二か月前に学園で見たのと同じ――。
いや、その何倍も、何十倍も、何百倍も。
酷薄な、瞳。
あれだけの人数を皆殺しにしたというのに、そこに罪悪感は一切感じられない。
虹と銀の光に包まれた少年は、月明かりの下で静かにたたずんでいた。
【完】
女神から13個のチート神器をもらった俺は、最強の【殺傷能力】【身体能力】【感知能力】で悪を駆逐する 六志麻あさ@12シリーズ書籍化 @rokuasa
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