第3話

 




 俺の名前は平松 大聖。

 二十三歳、独身童貞。

 趣味はプラモデルを集めることと釣り、それと動画鑑賞だ。

 十八歳の時に宝くじを当て、5年の時を優雅にニート生活を送っていた!


 ある日、優雅にパソコンをスリープモードにして椅子から立ち上がると。



 ────変な場所に居た。


 見渡す限り白い場所。


 大凡、理解出来ない場所で出会ったのはスーツが似合う綺麗な女性、七夏 侑さん。二十三歳。

 黒色の作業服を着た赤髪の男性、藤原 幸気さん。二十五歳。

 腹に学生服を巻いた金髪のぱっと見、不良少年の東山 礼二君。十七歳。

 喪服を着た坊主頭のガタイが良い空手少年、白真 塔矢君。十七歳。

 病衣を着ている中性的な男の子、尽道 シュウ君。十四歳。

 ダラリとした上下黒のスウェットを着ている茶髪の女性、南 陽菜さん。十九歳。

 学校指定の赤色ジャージを着ている三つ編みの女の子、目倉 クスコさん。十七歳。


 この七人の他に、とある人物とも出会った。

 名前はわからないが、そのとある人物が言うには。



『私は世界が憎い。故に世界を変えました』


『そして、貴方達は偶然にも選ばれました』


『特別な力を授けます』


『何を成すかは、貴方達次第です』


 とのこと。

 もっと説明が欲しいところだったが、その人物は何処かに消えた。


 自己紹介を終えた俺を含めた八人は、この状況について考えた。

 尽道君の、何かこの数日で変わったことは有りませんでしたか?という言葉で、俺、南さん、目倉さん以外の五人が反応を見せた。


 なんでも五人は《自殺がしたいです》というチャットルームに心当たりがあったようだ。


 話を聞く内に、俺は右頬を腫らすことになったのだが。

 それは割愛しよう。


 一番の進歩は、またもや尽道君が呟いた言葉。


『────ステータスオープン……出ました』


 俺はなんのこっちゃわからなかったが、俺を除く六人は各々が『ステータスオープン』と呟いていき、多種多様な反応を見せる。


 試しに俺も言ってみた。


 すると、



 ──────────────────


 れべる いち


 なまえ ひらまちゅ たいせい


 ねんれい にじゅうさんさい



 ちから いち

 ちりょく ななじゅうはち

 すばやさ じゅうに

 がんじゅうさ さんびゃく(まっくす)



 とくしゅのうりょく:ゆうれいがみえるのだ!

 それと たいけんできるんだお!!



 ──────────────────



 ……視界にゲームのような画面が出てきた。


 なんなんだこれはと、俺は固まった。

 先ず、名前が違う。

 俺はひらまつ たいせいだ。

 次に、れべるとはあのレベルか。

 RPGでよくある、モンスターを倒すと上がっていくあのレベルなのか。

 ……少しだけ楽しくなったが、他の文字を見ていき眉間に皺を寄せる。

 力が1、知力が78、素早さ12、そして……頑丈さが300(MAX)とのこと。


 意味が分からない。

 いや、そんなことよりも、もっと意味が分からない文字がある。



 ────特殊能力:幽霊が見えるのだ! それと体験出来るんだお!!



 なんだそれは。

 幽霊が見えてなんになるという。

 体験とは何だ。

 どうしてビックリマークを付けている。

 ビックリマークを頭につけたいのは俺の方だ。



 ………………みんなをチラリと見る。


 虚空を見ているようにしか見えない。

 ならば、俺も他者から見ると、虚空を見ているように見えるのか。



 黙っていても埒があかないので。

 俺は声を出すことにした。



「……皆さんも同じように、何かが見えるんですか?」



 七夏さんが口を開き、藤原さんも同時に口を開く。


 だが────言葉が発することはなかった。



 何故ならば、あの人物がいつの間にか真ん中に立っていて、声を張り上げていたのだから。



「────さて、交流は深まりましたか?」


 誰も返事をしなかった。

 当たり前だ、いきなり現れたのだから。


 しばらくの静寂が訪れ、そいつは勝手気ままに話し出す。


「どうやらステータスを表示できたようですね。つまりは契約をした・・・・・ということ。皆様、これからよろしくお願いします」


「……どういう意味だよ」


 不機嫌な顔で疑問を投げる東山君。

 その疑問を無視して、そいつは話を終わらせる。



「皆様には変わった世界に降り立ってもらいます。変わった世界で何を成すかは貴方達次第。では、貴方達に幸があらんことを」




 そいつは、中指と親指を引っ付け……指を鳴らした。



「あぁ?」

「……」

「え?」


 誰が声を出したかわからない。

 俺はただ、呆然としていた。

 人生至上一番間抜けな顔をしていた自覚がある。




 綺麗な音が場に響き渡った瞬間────景色が変わった。




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