第5話
黄金の建物を見渡しながら歩いていく。
隣には、見た目10歳ぐらいの女の子が宙を浮いている。
女の子の名前は幽霊ちゃん、数千年の時を生きる幽霊らしい。
どうして俺に幽霊が見えるのか、とある人物曰く『力を授けました』とのこと。
幽霊が見える力を授けられた、そういうことだろう……よく分からないが。
【先ずは宿屋を探すことじゃな。タイセイは人の身故に疲れるからのぅ】
幽霊ちゃんの言葉に、何処ぞのRPGみたいな台詞だと思い。
同意するように頷いたが、疑問が湧き出た。
「そうだけど、宿屋って有るの?」
見渡す限りの金色の建物。
恐ろしいことに────入り口はない。
扉が一切、付いてない建物ばかりだ。
【今の世界は何処にでもあるぞ? 宿屋いっぱい
なんだその街。
名前の通り、宿屋がいっぱいあるのか。
名付けた人はきっと単純な人なんだろうな。
「……そっか。そういえば、今日は平成27年5月6日で良いんだよね?」
あの変な場所に行く前は平成27年5月6日だった。
そこまで時間は経ってないと思うが、一応聞いておいた。
……だが、どうやら俺は甘く見ていたようだ。
【────へいせい? ……どっかで聞いたことあるが、今は西暦7,000年ぐらいじゃぞ?】
結構時間は経っているようだ……という次元の話ではない。
最早、俺の知っている世界じゃないという話だ。
「……本当の本当?」
【む? 妾は嘘は吐かんぞ。たしかこの前、7,000年記念でドラゴン召喚なるものをヒラヒラ街でやっておったからの。おそらく7,000年は超えておる。正確には知らんがの】
……信じられないが、幽霊ちゃんが嘘を吐くメリットは無いか。
となると、俺が知っている世界から約五千年の時が流れている。
これは、幽霊ちゃんの知識を精一杯頼ろう。
「……その、ドラゴンって何かな?」
創造物では知っているが、確実にファンタジーなモノ。
現実ではいないモノとされている。
だが、この世界では信じれる。
この黄金の建物がファンタジーそのもの、そして幽霊なんて居たんだ。
ドラゴンもいるかもしれない。
フラフラと俺の横で浮きながら、幽霊ちゃんはなんともなさそうに答えてくれる。
【数千年前、妾が生まれた時からおる変な生物じゃ。時々、妾に攻撃してくることもあるわい。そん時は軽く吹き飛ばしておるの】
……よし、信じよう。
信じれるのは幽霊ちゃんだけだ。
決めた、今からは幽霊ちゃんの言葉を全部信じよう。
「ドラゴンさんも幽霊ちゃんのことが見えるんだね」
【偶にじゃがの。死人が見える生物なぞ、妾はドラゴンと猫しか知らぬ。実体化をした場合であれば話は別じゃが】
へぇーと頷きながらも歩く。
さっき、武装している人らしきモノが見えたが一向に会う気配はない。
この街には俺しか居ないのでは?と思う程、この街は静けさに包まれている。
「気になってたんだけど、実体化って?」
【まぁまぁ強い幽霊は実体化が出来るようになる。言葉の通り、生前の姿で実体化するあまり使いたくない力じゃ。霊力の消耗が激しくての、妾でも三日間実体化したら霊力が尽きるわい】
それって、幽霊が生き返る力では?
三日の間でも生き返るって……俺の時代でも居たのだろうか?
「……俺って五千年ぐらい前から来たんだけど、その時から実体化が出来る幽霊って居たのかな? 」
【…………シレッと凄いことを言ったの。じゃが、そこはスルーじゃ。適当に生きとる妾はスルーじゃ。いひひっ、タイセイの疑問じゃがおそらくは居らんわ。なにせ実体化が出来るようになった幽霊は、妾が初めてじゃからの】
初めて?
どうしてそう思うんだろうか。
口には出してないが、幽霊ちゃんは俺の疑問を汲み取って説明してくれた。
【妾は産まれた時に、他の幽霊を探し回った。じゃがの、そもそもな話……その時に人間は居らんかった。故にこそじゃ、タイセイが産まれた時に妾は幽霊として存在しておったかもしれんが。実体化を出来るようになったのは二千年もの昔。そういうことじゃ】
人間が居ない時に、幽霊ちゃんは産まれた?
それっておかしくないか。
「えっと、人が居なかったら幽霊ちゃんはどこから来たのかな?」
【さてのぅ、深くは考えておらんわい。妾は存在するからの。現に妾は《原初の幽霊》、《幽霊系最強》などなど他にも────
…………称号。
なんだそれは。
当たり前のように話されたが、称号とは何だ。
俺は立ち止まり、幽霊ちゃんに聞く。
「幽霊ちゃん……称号って何?」
【……………………ふむ。タイセイは謎じゃの、じゃが面白い。称号とは何か。それは、数千年も前から人類が追い求める
なるほど。
────サッパリだ。
「……理解したよ。俺には理解できないモノってね」
【いひひっ、じゃろうの〜】
愉快に笑う幽霊ちゃんはフワフワと浮きながらも前に進んでいく。
歩みを再開して、幽霊ちゃんの横に並び立つ。
「ちなみに、称号ってのはどんな風に与えられるの?」
【声が頭に響くわい。妾の場合は産まれた直後に『
考えれば考えるほど、謎なものか。
紛れもなく、世界は
受け入れるしかない。
「……話は変わるけど、ステータスって表示されないんだよね?」
【そうじゃな。ステータスなぞ、妾はゲームと小説でしか聞いたことないの】
……本当になんなんだろうか。
確かめるべく、俺は「ステータスオープン」と口にした。
ステータスが変わら…ず…………表示されると、思っていた。
変わっていた、ステータスが。
前は平仮名表記だった、だが今回は。
──────────────────
レベル 1だぜオラァ!
名前はひらまちゅんたいせいだオラァ!
性別は男だぜオラァ!!
力1、知力85、素早さ13、防御力300越え。
評価、知力と防御力以外クズだぜオラァァ!!!
特殊能力は幽霊が見えるって舐めてんのかオラァ!
それと体験出来るって訳ワカンねぇよウラァァ!!
総合評価、もっとレベル上げろヤァァァ!!!!!
──────────────────
…………。
【……どうしたのじゃ?】
不思議そうに宙で静止した幽霊ちゃんを見て、俺は何かの見間違いだとステータスを見る。
……見間違いではない。
あぁ、これも現実だ。
数十秒して勝手に消えたステータス。
いったい、誰が俺のステータスを書いたのだろうか。
完全にふざけている。
「……幽霊ちゃん、レベルって有る?」
【RPGでは有るが、現実ではないぞ。それがどうかしたかの?】
「そっか……うん、今の質問は忘れてくれ」
【…………?】
どうやって上げるんだろうかレベルって。
なんか嫌だな、ステータス見るの。
次はどんなことが書かれてるんだろうか、ちょっと怖くなってきた。
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