第8話

 





 □





 ────起き上がる。



 俺の名前は深井ふかい 響也きょうや

 四十二歳、独身。

 生年月日は昭和49年8月3日。

 好きなモノは煙草と酒。


 周りを見る。

 なんだ此処……コレ全部、金か?


【うむ、起きたか】


 あぁ?

 声の方、横を見ると……へんなガキがいやがる。

 なんだこのガキ。


「……迷子か」


 としか思えないな。

 夕日の所為で赤くなった地面を踏みしめ、立ち上がる。


 ……あぁ?

 意味わかんねぇぞ。

 なんで俺はスーツなんか着てんだよ。

 店長の葬式以来着たことねぇぞ。


 クソが、どうなってんだこれは。



【────タイセイ・・・・、どうかしたのか? 少し様子が変じゃが】



 ……たい…せ……い…………?



 ────頭がイテェ!


「────ぐっ……っ!!!」

















 …………俺の名前は、平松 大聖。

 二十三歳。


 そして今、意識が定まらない。

 何が起きた。


 いや、なんとなくわかるぞ。


 俺は、深井 響也の一生を見た……?


 違う。


 そうじゃない。





 ────体験しやがった・・・・・・・






 これこそが、俺のもう一つの力。


 この力と向き合うことが、俺と幽霊ちゃんの旅路に深く関わることになる。



 この時はまだ、そんなことを知らずに……みっともなく蹲るだけだった。

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